Dick Hyman ディック・ハイマン / After Six

Hi-Fi-Record2009-01-30

最近発見したこのレコード、
東海岸のキーボード職人ディック・ハイマンによる
小気味良いラウンジ・ピアノ集なのだが、
問題は裏ジャケにあった。


通常、
この時代のアルバムには
某かの方々が解説や推薦文を寄せている。


それがこのアルバムの場合、
バート・バカラックという人物なのだ。


肩書きはコラムニスト。


え? バカラックって、
音楽活動と併行してそんなこともやってたの?


発売年は1960年。
すでにソングライターとして精力的に活動をはじめ、
独自の個性を磨く途上にあった時代だが、
コラムニストを余芸にしていたという話は聞かない。


いぶかしげにジャケを見つめるうちに
意外なことを見落としていたことに気がついた。


“バート”のつづりが違う……。
“Burt”ではなく、“Bert”だ。


どうやら別人らしいぞと思ったのもつかの間、
続いて浮上したのはおどろきの事実。


“Bert”のバカラックは、
“Burt”のバカラック
実の父親だったというのだ!


父バートは
全米の新聞協会にコラムを提供する人物で、
社交界をよく知る立場から
おとなのたしなみとしてのディック・ハイマンの魅力を
説いたというわけなのだった。


それにしても
バートの子はバートだなんて。


同名を息子に付けて
“ジュニア”と呼ばせるというパターンは
欧米では珍しくないけれど、
一字違いというのは逆にあまり聞いたことがない。


おとうさんは
ちょっと変わったひとだったのかもしれないね。


いつの日かひょっとして
バカラックに会うことがあるとしたら
訊きたいことがひとつ出来たよ。(松永良平


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