Scott Brown And Tempests / TENSPEED

Hi-Fi-Record2009-02-05

 訳あって、40年近くも昔にラジカセやオープン・リール・テープに録音してあった自分たちバンドの音源を聞いている。
 どこの世界にもプロという方はいるもので、そんなに昔のテープを持ち込んでも、見事な技を持ってデジタルに起こしてくれた。これをiPodに入れて、通勤途中の電車の中で聞く。


 とあるコンサートのライヴ。いやあ、昔は馬鹿なことをしゃべっていたなあと笑えるならまだしも、その馬鹿が今の自分にもつながっているものだから、とにかく恥ずかしい。今を鏡に映しているようだ。
 それでも時おり、思わずぷっと吹き出しそうになる一瞬もある。このマンドリンの演奏は、何て巧いのだろう、まさかオレか?と思って聞いていると、友人の演奏だった。自分はギターの伴奏をしていた。



 電車の片隅に座って、ひとり悶絶している。はたから見たら、相当に薄気味悪いだろう。今日の帰り道には、電車の中で聞くのは止めにしよう。
 それにしても、どんなシチュエーションで聞けば、平静な気持ちで聞くことができるのだろう。



 歌うということは、どこかで自分を表出してしまうもの。プロと呼ばれる人たちは、自分の歌唱や演奏をどのような気持ちで聞くのだろうか。「歌っていうのは、恥ずかしいもんなんだ」と、友人のプロ音楽家がコメントしていたことがあって、なんだかほっとしたというか、その彼を信じられる気がしたものだが。



 スコット・ブラウンのやわらかくて正直なボーカルがとてもいい。こうして彼が歌えるのも、認め合っている仲間が周囲にいるからなのだろうか。グループによる演奏を集めたA面の響きと、少しインナーな空気になるソロ演奏のB面。ぼくはB面が好きだ。(大江田 信)



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