Terry Adams テリー・アダムス / Holy Tweet

Hi-Fi-Record2009-02-06

帰省から帰ってきたら
テリー・アダムスの新作「ホリー・トゥイート」が
手元に届いていた。


ごめんねテリー、
今はそんな気分じゃない。


帰省中に獣医さんに預かってもらっていた
重病の猫が亡くなったのだ。


テリーの前作「ラヴ・レター・トゥ・アンドロメダ」は
内省的で実験的な
ロピアノ・インプロヴィゼーション集だった。
今回の新譜はロックだよと
ドラムで参加したトム・アルドリーノから聞いてはいた。


でもさ、
テリーがロックするときは
ときどき気合いが入りすぎていて、
とてもじゃないが今のぼくの気分じゃ
まともに立ち向かえそうにない。


そう思って
しばらく机の上にほおっておいたのだ。


数日後、
悲しんでばかりもいられないと
机に向かってライター仕事を再開したら
テリーが「よお」と呼びかけているではないか。


聴いてみるかと
ようやくぼくはその気になった。


そしたら、これがいい。
すごくいいのだ。


今回のテリーは行き過ぎたテリーじゃなくて
やさしくて親しいテリー。
NRBQで言えば「ティドリー・ウィンクス」のアルバムみたいな
友情気分のサウンドだった。


とりわけ心に響いたのは
7曲目の「フィート」。


自分の足で歩いていれば
いつかは大切なひとに会えるよ、なんて
今の時代にどうかと思うほど率直で古くさい、
だけどささやかでセンスのいいラヴソング。


この曲を聴いたとき
ドアの陰から
猫が歩いて出てきたような気がした。


そしてその猫は
亡くなった猫じゃなくて
ぼくの知らない新しい猫だ。


事実、
その直後、
我が家には新しい猫がやってくることになったのだ。(松永良平


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