MFQ / Moonlight Serenade
MFQのライヴ前のリハーサル風景を見ることができたのは、幸運中の幸運だった。
その様子は、いちどこのブログでも書いたことがある。
いつもいつもメンバーが集まって活動を続けている彼らではないので、随所におさらいが織り込まれる。その光景が楽しかった。
MFQのハーモニーの醍醐味は、チップダ・グラスによるコーラス・アレンジが生み出している。
ここのフレーズはどうだったっけ?とヘンリー・ディルツが訪ねると、チップは手に抱えているベースをなぞりながら、こうだよと教える。記憶の中の譜面を思いだして口伝えに伝えるというよりも、その場でアレンジを考えているように僕には見受けた。
メロディの動きを意識しつつ、コーラスとしての響きを豊かにするフレーズが作り出され、そしてハーモニーが出来上がっていく様子が手に取るようにわかる。そんなリハーサルだった。
MFQの4人が生み出すハーモニーの楽しみを存分に楽しむことが出来る作品がこれだ。フォーク・コーラスの豊かな成果として聞くことができるのはもちろんのこと、ジャズ・コーラスのたおやかなる潮流に産み落とされたふっくらとした果実として味わうことも出来る。(大江田信)