Norma Tanega ノーマ・タネガ / Walkin’ My Cat Named Dog

Hi-Fi-Record2009-02-24

ニューヨークの黒人女性シンガーソングライター、
ノーマ・タネガが生涯に唯一発表したアルバム。


歌声に
吐く息の白さと
それでも少し暖かくなってきた季節の
かすかなぬくもりを感じるこのアルバム、
季節は今ごろを想定していたんじゃないかと
聴くたびに思う。


だからこの時期に
お店に置いておくことができるのは
ぼくにとってはうれしいこと。


もちろん、
売れたらもっとうれしいですけど。


このアルバムについては
去年の11月に大江田さんが一度書いている。


収録曲の「ヘイ・ガール」に
レッドベリー〜ノーマ・タネガ〜カート・コバーンの連鎖を
発見したというお話。


それは慧眼として、
ぼくがそのときもうひとつ思い当たったのは、
ひとつのメロディが歌詞を変えることで
別の曲として時代ごとに生まれ変わっていくことを
許容するアメリカ人たちのおもしろさだ。


アメリカで
「曲が良い」とか
「この曲には重要な意味がある」と表現されるとき、
往々にしてそれは
日本人が考える“曲=メロディ”優先ではなく、
“曲=歌詞”優先という発想に立脚している。


欧米では高く評価されていて
日本では今ひとつ真価が理解されない
そういうタイプのアーティストに
実はこの手はすごく多い。


それに
この発想は
ヒップホップ=ラップ的な文化の成り立ちにも
実はすごく深いところでかかわっている。


歌詞をもっと読んだほうがいい、とか
メロディ主義だから日本には独自の洋楽文化が根付いた、とか、
型通りのことを言いたいわけじゃない。


ただ、
言葉について
もっと音楽的に考えたいなという個人的な問題は
喉に刺さった小骨のようにずっと
やけに引っかかっているのだ(またいつかに、つづく)。


松永良平


Hi-Fi Record Store