Steven Farmer And Michael Myers / Homegrown
買い付けで、アメリカの各地に行った。これまでに全米50州の半分以上には、足を踏み入れていると思う。一度は尋ねてみたい土地へ、買い付けと言い訳して行ってみたこともある。内心では、もう二度とこの街には来ないだろうなあと思うものの、不思議とそうした場所で感じたことがら、たとえばメイン州の冬の街角で見た空とか、フロリダの夏の湿った海風とか、それとなく覚えている。
それでもモンタナには、まだ行ったことが無い。山だらけ、暮らす人の数も少ないといった程度のイメージしか持ち合わせていない。そういえば「Three Young Men From Montana」なんて名前のグループもあった。モンタナ出身を売りにしているのだ。
こちらもモンタナ出身のデュオ。
なんということか、ものすごくセンスがいい音の響き。アコースティック・ギターを縦横に用いて、フォーキーな響きを作り出している。こちらが勝手に抱いていた田舎のイメージを吹っ飛ばすようなサウンドだ。
ぼくのアメリカは、音楽を聴いてイメージすることがいつも先だった。ロサンジェルスも、ニューヨークも、ボストンも、シカゴも、これまでに行ったどの街でもそうだった。
いつかモンタナに行く機会があるのだろうか。音楽からイメージするモンタナと、実際のモンタナとは、やっぱり違うのだろうか。
ジャケットにはロッキング・チェアに座った二人が、それとなく向かい合いながらギターを手にしている姿が描かれる。
もしもモンタナに行ったときには、スティーヴン・ファーマー&マイケル・マイヤースのこのアルバムのことを思い出すのかもしれない。この音楽が素敵に響く街だったら良いなあと思い描く。(大江田信)