James Taylor ジェームス・テイラー / In The Pocket

Hi-Fi-Record2009-03-24

ジェームス・テイラーの「イン・ザ・ポケット」。
このB面1曲目に入った
「ウーマンズ・ガッタ・ハヴ・イット」に
聴き惚れた。


この曲は
彼のオリジナルではなく
ボビー・ウーマックのカヴァーだ。


そして
振り返ってみると
このひとは
それぞれのアルバムに1、2曲、
必ずカヴァーを入れている。


ためしにリストアップしてみたら、
結構なリストになった。


初期から近年までの順で書き出してみると
なおおもしろい。


ステファン・フォスター「オー・スザンナ」
キャロル・キング「ユーヴ・ガット・ア・フレンド」
ジョン・マクラフリン「サムワン」
カントリー・ジェントルメン「ワン・モーニング・イン・メイ」
チャック・ベリー「プロミスド・ランド」
マーヴィン・ゲイ「ハウ・スウィート・イット・イズ」
ボビー・ウーマック「ウーマンズ・ガッタ・ハヴ・イット」
ジミー・ジョーンズ「ハンディマン」
ビートルズ「デイ・トリッパー」
シュレルズ「アップ・オン・ザ・ルーフ」
ドリス・デイ「マイ・ロマンス」
バディ・ホリー「エヴリデイ」
ジーン・ピットニー「リバティ・バランスを撃った男」
サム・クック「エヴリバディ・ラヴズ・トゥ・チャチャチャ」
(トラディショナル)「ザ・ウォーター・イズ・ワイド」
ナット・キング・コール「ウォーキン・マイ・ベイビー・バック・ホーム」


スタンダード・ソングについては
おそらく彼の年齢で少年時代に聴いたであろう
ヒット・ヴァージョンの歌い手を選んだ。
「オー・スザンナ」のようなアメリカ人にとっての心の歌のような曲や、
「ザ・ウォーター・イズ・ワイド」のように
いわゆる作者不明の伝承歌が
モダンフォーク・シーンの中で広く定着した楽曲については
録音は多いが
これは歌い手を特定しない方がいいだろう。


友人ダニー・クーチマーの曲も
結構採り上げているのだが、それは省いた。


ケニー・ランキンもカヴァーの多いひとだが
彼の場合は
ミュージシャンとしての本能が
「あの曲を演奏したい」と求めてのカヴァーであるように思える。
曲に対する態度がどん欲に感じる瞬間が
ときどきあるのだ。


ジェームス・テイラーのカヴァーは
それほど前のめりではない。


それぞれのアルバムに
控えめに収録されているのは、
自分のことばかりを歌わなくてはならない
シンガー・ソングライターという宿命から逃れる
シェルターのような役目を果たしているように
ぼくは思った。


そういう意味では、
自作曲よりもむしろ率直に
その時代ごとの彼の心境を表現しているのかもしれない。


そう言えば、
彼の最新作は
全曲カヴァーの「カヴァーズ」というアルバムだった。


彼の“小出し”カヴァーが好きな者として、
そういうことをされると
聴くべきなのかどうか
大いに迷わされるんだよな。(松永良平


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