The Di Mara Sisters ディマラ・シスターズ / Memorie Di Roma

Hi-Fi-Record2009-04-01

 部屋の隅に去年の一年間使っていたカレンダーが置かれていた。20世紀のアメリカの画家、エドワード・ホッパーの作品を一面に用いたものだ。


 音楽の仕事を求め英国のパブで演奏して生計を立てていたアメリカ人バンド、エッグズ・オーバー・イージーによるアルバム「Good'n'Cheap」。このカバーに用いられたのモチーフが、エドワード・ホッパーの代表作「ナイト・ホークス」だ。独特の寂寥感をたたえた作品に味がある。



 去年、毎日のように見ていたはずなのに、改めて眺めてみて思わず目に止まった一枚があった。タイトルは「Italian Quarter, Gloucester」。アメリ東海岸の小さな港町、グロースターのイタリア人街を描いた作品だ。
 北の海と空に面したグロースターは、今ではホエール・ウォッチングの船が出るとして知られる観光都市。ここには、抜群のイタリア料理が複数ある。パスタやスープが美味しいレストラン、町の人が毎日のように買いにくるお総菜店、ちょっとした甘いお菓子も売るパン屋などなど。
 イタリア人街のイタリアン・レストラン。イタリア人の人たちが、フツーの食事の時に食べているものが、ちょっとオシャレになってテーブル上に届くだけ。それでも伸びきったパスタを気取って食べる大都会のイタリア料理よりも、何十倍も美味しい。値段もリズナブルだ。



 アメリカで日本食と言えば、スシ、鉄板焼き、照り焼きなどなど。日本人に取っては、毎日食べているものではない、非日常的な食事となってしまう不幸せ。おいしい日本食店になかなか巡り会えないのも、そうした料理が日本食として認知されてしまっているからかもしれない。
 イタリア人街のイタリア料理店、中国人街の中国料理店、韓国人街の韓国料理店。日本食レストランが、そんなふうに街の人のためのフツーの料理店としてあるのは、ハワイのラーメン店のいくつか、あるいはロス界隈のYOSHINOYAとなってしまうのかも。



 なんてなことを、 ディマラ・シスターズのアルバム「Memorie Di Roma」を聞きながら思い出した。
 陽気なイタリア娘が踊りだしそうなアルバム。(大江田信)