Mantovani And His Orchestra / The Mantovani Scene
AMラジオで音楽番組を選曲していたときのこと、マントヴァーニのオーケストラは、ミキサー泣かせだという話になった。
ドラムがリズムを刻むわけではないし、ストリングスをメインにしたサウンドには、これといった強いアタック音が有るわけではない。すうっと滑り込むようなイントロに始まり、気がつくとストリングスがメロディを歌い始めている。前後の曲とのつなぎに最新の注意が要る、といったようなことだったと思う。
たしかにぎゅっと握りつかむようなコンパクトにまとまったサウンドではないし、茫洋としていると言えば茫洋としている。それがマントヴァーニのマントヴァーニたるところなのだと言ってしまえばそれまでだが、とりあげる作品の傾向が変わって同時代のポップスになってきてからも、その美意識はかわらず一貫していた。
ゆる〜い、ゆる〜い「恋はフェニックス」。ソフトクリームがすっとやわらかくなって溶け出してゆくようなゆるやかな広がりがあって。日曜の午後のようなカーディガン姿のジャケットも、同好のぼくには好ましい。(大江田信)