Peter, Paul And Mary / Ten Years Together

Hi-Fi-Record2009-04-08

 HIS(細野晴臣忌野清志郎坂本冬美)のライヴ映像を見ていたら、忌野清志郎がリード・ヴォーカルを取る「500マイル」に行き当たった。
 聴いているうちに、ああ、これはピーター、ポール&マリーの「500マイル」が下敷きになっているなと気づいた。
 メロディの追いかけ方や、オブリガードに、P,P&M版の面影がある。かつて少年時代の清志郎が、同曲を聴きながら思い描いた別れの風景が歌われている、そんな風にも聴こえた。P,P&Mへの追慕も香る。清志郎とほぼ同年代、しかもかつてピーター、ポール&マリーを好んだ耳には、たまらなく切ない歌だった。



 忌野清志郎が歌う「500マイル」の素晴らしさに言及するのはさておいて、ピーター、ポール&マリーの「500マイル」には、スタジオ・テイクとライヴ・テイクの二つがある。ベスト・アルバムである本作に収録されている「500マイル」は、ライヴ版。演奏終了時にかぶってくる拍手音が巧みに編集されているものの、耳を澄ますと終盤に客席からの物音がする。



 汽車乗って離れて行く放浪の定めの「私」が、「あなた」への惜別を歌う。
 「私」が移動して、「あなた」がとどまる。積極的な者の方が、惜別の思いが強い。「恋はフェニックス」の主人公と同じ行動パターンだ。
 アルフィーの「星空のディスタンス」の歌詞に登場する「たとえ500マイル離れても」という歌詞もまた、このフォーク・クラシックの影響下から生まれたとされていることを、初めて知った。(大江田信)


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