Denny McLain デニー・マクレイン / Denny McLain At The Organ

Hi-Fi-Record2009-04-13

デニー・マクレインの大リーグでの活躍は
約10年間だった。


1963年、
19歳の年にデトロイト・タイガースに入団。
主力投手として活躍し、
68年のワールドシリーズ制覇に大きく貢献した。


この年、
彼は31勝をひとりで挙げ、
ア・リーグのMVP、
サイ・ヤング賞
堂々と獲得している。


その68年のシーズンオフに
このアルバムは制作された。


大好きなオルガン演奏を
思う存分披露してもいいよ。


つまりこれは、
年俸には表れないご褒美だったのだろう。


彼はハモンド・オルガンの待つマウンドに
登板した。


こういう種類のうれしさを
ひとはどういう顔で表現するのだろうか。


ちなみに、
彼がデトロイトで大活躍した63年から
ワシントン・セネタースに移籍する70年までは
モータウンサウンドが地元で盛り上がった60年代から
LA移転を決めた72年までとも、
何となく符号する。


モータウンのハウス・プレイヤーであったオルガン奏者
アール・ヴァン・ダイクとも
さぞかしオルガン談義に花が咲いたのではと妄想してしまう。


69年のオフに彼はセカンド・アルバムを制作した。
70年のシーズンでは
オールスター・ゲームに選出された(3回目)。


しかし、
この年、肘を壊した彼は
ワールド・シリーズの最中にタイガースを放出された。
サード・アルバムはもう作られることはなかった。


セネタース
さらに移籍したアトランタ・ブレーヴスでは
故障のせいで成績がふるわず、
全米制覇の栄光からわずか4年で
転がり落ちるようにして
彼は大リーグを去った。


今、彼は65歳。
どこかのラウンジで好きなオルガンを弾いてはいまいか?


野球選手に限らず
セレブリティの余芸レコードが
軽く見られるのはしょうがないかもしれないが、
光だけでなく影も重ねて見聴き出来たら
その愛おしさは、まるで違ったものになってくる。


少なくとも
ぼくはそこからなかなか逃げられなくて。(松永良平


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