Lorraine Duisit ロレーン・ドゥイシット / Hawks And Herons

Hi-Fi-Record2009-04-15

 うまい具合に何枚か見つかったオータ・サンのアルバムを、このところ少しづつ店頭に出している。するとすぐに反応をいただく。オータ・サンの人気衰えずということなのかもしれないが、そこにはウクレレという楽器が持つ根強い魅力が潜んでいるようにも思う。


 ウクレレの魅力、それは両手に収まるほどにささやかな楽器がもらたす、小さな宇宙のような楽しさだろう。ハワイアンのアンサンブルの伴奏楽器だったウクレレが、ソロ楽器として役割を果たす過程で生まれた演奏手法の発想の飛躍には、変わらず繰り返し驚かされる。聞くものの耳に、そんな気持ちが働いているに違いない。


 小さな楽器の楽しさという点では、マンドリンも同様だろう。生まれ故郷のイタリアではいざ知らず、アメリカのカントリー系のポピュラー音楽ではリズムと和声をキープする伴奏楽器だったマンドリンに、いつのころからさまざまな可能性が見いださせるようになった。


 ロレーン・ドゥイシットはマンドリンを弾きながら歌うシンガー。マンドリンでフレーズを取りながらスキャットするという技も見せる。まるでロレーン・ドゥイシットという名の下の楽器の一部として、マンドリンが響き廻っているように聞こえる。
 そしてなによりも響きがいとおしい。つつましく、優しい。
 ジャズとカントリーの要素が混ざり合う音楽にも、ヴァイオリンと同じ調弦がなされているマンドリンの特質が映し出されている。(大江田信)


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