Cher シェール / Cher
シェールの歌う「アルフィー」を
去年の秋、
ぼくは友人の運転する車の中で
初めて聴いた。
秋の気配はまだ若く
陽差しの強い昼だった。
木立の影と
陽光がつくりだす演出に
やられたせいもあるのだろうが
腰を抜かすほど感動した。
これは誰かと訊ねて
シェールだという
その答えにびっくり。
そしてマイケル・ケイン主演の
あの「アルフィー」（66年）の
アメリカ公開時のテーマソングだったと聞いて
二度びっくり。
イギリスでのオリジナル公開版には
このヴァージョンは使用されていないのだという。
だから当然ながら
ソニー・ロリンズのサックスがうねる
インパルスでのアルバムにも収録されていない。
そういえば、
この「アルフィー」は
ジュード・ロウ主演のリメイクが近年公開されるまで
日本ではDVDはおろか
VHSすら制作されていなかった
半ば幻の作品と化していたのだ。
果たせるかな、
リメイク版のおかげで
オリジナル版のDVDも店頭に並んだそうなのだが、
今でも手に入るのかチェックしていない。
それよりもまずは
このシェールの音源の方をゲットするのが先決だと
思ってしまうのがレコード者の悲しい性。
しばらくの間、
血眼で日本人は誰ひとりとして見ないシェールのコーナーを
探していたのだが、
大スターだった彼女のアルバムは
美品を適価でというのがちょっとだけ難しい。
ようやく見つけたこのアルバムには
大きく掲げられた「Cher」の下に
控えめすぎるほど小さな文字で
「Alfie」と書いてあった。
アメリカでだけの起用だし
映画を製作したパラマウントとも関係のない
インペリアルからのリリースということで、
ちょっとだけ遠慮をしていたのかもしれない。
彼女の歌う「アルフィー」自体には
何の遠慮も要らない。
アレンジも歌も心底素晴らしい3分間の奇跡だ。（松永良平）
