The Krush クラッシュ / The Krush
先日、今年初めてのハワイ州政府観光局のテレビCMを見た。
ハワイの気分がやわらかく漂ってくる映像に、ああ、ハワイだなあと思った。ハワイの持つ雰囲気が、やわらかく映し込まれている。そろそろ夏の旅行の予約を喚起する時期なのだろう。
これまでに一生懸命にハワイ生まれのレコードを聴いて来たつもり。どこかにハワイを訪れている観光客の手みやげ的なニュアンスがある。これは否定しにくい事実だと思う。
ハワイでハワイアンのレコードを見つけにくくなった今、探すとなるとアメリカ本土ということになり、そうなるとハワイに遊びに行くことがあり得る地域に残っている中古レコードを探すことになる。
東海岸の地域の人たちに取っては、わざわざハワイに行くのならば、それよりもっと手近なフロリダとか、カリブ海エリアということになるのだろう、あまりハワイのレコードを見かけない。
アメリカでハワイ生まれの音楽のレコードを見かける度に、ああ、これは観光客の手みやげだったのかもしれないと思う。
Krushの場合は、どのような背景でレコードが作られたのだろう。
70年代中期のメインランドの音楽トレンドと呼応するかのように、ライトでプリAORな感覚を盛り込んだポップ。こうした音楽がホノルルで演奏されていただろう事は、想像に難くない。たとえばディスコ等で演奏するKrushを、地元のロコの若い世代の聴衆が、支持をしていたのだろう。
同時に繰り返しアルバムを聴いていると、メンバーやスタッフの誰もが、メインランド進出を目していたのかなという気もしてくる。時代のポップスのサウンドを響かせながら、そこに盛り込まれている楽園感覚は、メインランド製のそれより遥かに自然でのびやかだ。
そろそろ窓吹く風に、次の季節の香りが紛れ込み始める。
こういう時期に聞くのが、いちばんぴったりと来るように思う。(大江田 信)