Different Shoes ディファレント・シューズ / Tie One On

Hi-Fi-Record2009-05-01

 ハイファイではシェルビー・フリントやキャシー・テイラーといったフォーク風味を持つ女性ポップ・ボーカルに、密かな人気がある。アーゴからリリースされている男性ボーカル、マーティン・ヤーブロウの音楽にも、同様の支持があるように感じる。
 ともにフォークのレパートリーを演奏はしている。サウンドもフォーク流だ。しかし従来から言われるところのフォークに根ざす音楽性とは違う。トレンドだったフォーク・ブームにうまく乗っかって、ポップな音楽を生み出しているところにポイントがある。



 純フォーク支持者からすれば、こうしたフォークは興味の対象とならない。ぼくも長い間、真剣に手に取らなかった。
 それがこのところ変わってきた。とてもおもしろいと思うようになった。



 この種のフォークなポップスに興味を示すお客様とアルバムを手に雑談をしていると、同じような気持ちで耳を傾けていることがわかる。アーチスト個人の資質がもたらすものなのか、それともジャンルがもたらすものなのか、まだうまく言葉にできないのだが、少なくともそこにはフォークを聞く時の感性とはまた違うものが、働いているように思う。



 ディファレント・シューズの一員、ピクシー・ラウアーの歌声。彼女のボーカルにも、フォークにとどまらない時間が流れている。
 彼女にはボサノヴァとフォークを掛け合わせたようなアレンジ作品を収録した素晴らしいソロ・アルバムがあるのだが、これがとにかくレア。そのソロ・アルバムの5年後の歌声がこれになる。4人のシンガー・ソングライターが作品を持ち寄って、互いに互いのバッキングをしている。
 実を言うとハイファイのサイトのサンプル音源は、2曲ともピクシー・ラウアーのボーカル曲だ。ふと遠くを見ているような気分に、誘われる。(大江田 信)


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