David Laibman & Eric Schoenberg / The New Ragtime Guitar
今でこそフィンガリングのギターによるラグタイムの演奏は、多く耳にするようになったけれども、おそらくこのアルバムがそうした試みの先駆けだったのではないかと思う。
戦前カントリー・ブルースのシンガーが、ラグタイムのフレーズやベース・ランを織り込んだギターを弾いていたことはある。後継の次世代のフォロワー達にも、そうした試みはあったのかもしれない。しかし、ここまで本格的に取り組んだアルバムは初めてだったのではないかと思う。
ピアノのフレーズをギターに置き換えて、ラグタイムを演奏する。と、こう口で言うのは簡単だが、実際にちょっとやってみればわかるように、それは至難の業だ。
このアルバム、ギターの定位にいくつかのパターンがある。醍醐味はギターが左右にくっきりと分かれたステレオの音源。ふたりによるベースパートの音と、高音パートの音が、まるでピアノの動きのように耳に届く。これが楽しくて仕方がない。
それにしても、このギター、素晴らしく上手いのだ。
ドビッシーやサティがラグタイムに関心を持ち、自身の作品に反映したと聴いたことがある。収録の「Red Carpet Rag」のやわらかい響きとメロディを聴きながら、そんなことをふと思い出した。(大江田信)