Baden Powell バーデン・パウエル / Baden ””Fresh Winds”” with

Hi-Fi-Record2009-05-10

週刊モーニングに連載の望月峰太郎の「東京怪童」。
先週号では、なんとヴィニシウス・モラエスの「Samba Da Bencao」の歌詞が、美しく引用されていた。
曲のタイトルで「はて?」となる方も、聴けば「あぁ、これね。」となることでしょう。本当に数多くのアーティストにカヴァーされた名曲。フランスでのタイトルは「Samba Saravah」。映画「男と女」で、ピエール・バルーがカヴァーしています。


悲しみといるより 明るい方がいい
歓びは何にも勝る 心に差し込む光
でも 美しいサンバを作る為には 悲しみがなければだめ


悲しみのないところで サンバは生まれない
サンバを作るのはジョークを口にするのとは違う
そんなサンバを作る人なんてのは 大した事ないもの
いいサンバはまるで祈りのよう
なぜならサンバは揺れる悲しみ
そして悲しみには常に希望が寄り添う
悲しみには常に希望が寄り添う
いつか悲しまずにすむ日が来るだろうという希望が
夢を少々 カデンツ(※)ひとつ
この世の誰にも超えられないもの それがサンバのもつ美しさ


悲しみといるより 明るい方がいい
歓びは何にも勝る 心に差し込む光
でも 美しいサンバを作る為には 悲しみがなければだめ


※独奏協奏曲にあって、独奏楽器がオーケストラの伴奏を伴わずに自由に即興的な演奏をする部分のことである。なお、イタリア語の「カデンツァ」もドイツ語の「カデンツ」も、もともとは終止形としての和声進行を意味しているが、一般に協奏曲の即興的独奏部分については「カデンツァ」が使われることが多い。(wikiより引用。僕にはよくわかりませんが…)


「東京怪童」で使われた部分の抜粋は以上。どのようなシーンで使われたかは、読んでみて下さい。


僕は普段レコードでばかり聴くもんだから、歌詞についてはよく知らない。ただただなんとなく、フワフワしたモラトリアムな感じだろうと、よく高をくくってはこうやって実際に日本語訳にしたものを読んだときに、「やられた!」と、ズッキュンしちゃうワケです。だって、「悲しみといるより明るい方がいい」「悲しみには常に希望が寄り添う」ですよ。ふぅ。


「漫画」には、このように実在する楽曲の歌詞を引用して、絵とシンクロさせた映像譚のようなシーンが度々見受けられる。少年マガジンで連載された「特攻の拓」でも、何度かそういったシーンがあったし、曲は原作者(「特攻の拓」はヤンキー漫画のカリスマ、佐々木飛呂斗さん)の趣味趣向で多様だ。


本日の一枚は
ヴィニシウス・モラエスと数多く共演し、これまた数多くの名曲を共作したバーデン・パウエルのアルバム。


Baden Powell バーデン・パウエル / Baden ""Fresh Winds"" with Paul Mauriat And His Orchestra


巨匠ポール・モーリアと共演したこのアルバム。バーデン・パウエルが、気持ちよい風の中を歩くようにギターを奏でている。ちょうど今日みたいな日にぴったりなサウンド。まさに、Baden ""Fresh Winds"" !
美しい女性のスキャットをあしらった儚げな「Samba En Preludo」は、「悲しみよこんにちは」という語感が合う。悲しみに寄り添う"祈り"や"希望"、暖かさが感じられる。


希望や祈りのない漫画なんていらない。「東京怪童」、良い作品になりそうです。


(藤瀬俊)


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