Faces フェイセス / Snakes And Ladders

Hi-Fi-Record2009-05-19

The Cool School 10 ベスト・店員・イン・タウン


アメリカのレコード屋の店員には
2種類しかいない。


それは
トイレを貸してくれる店員と
貸してくれない店員だ。


断るときのいいわけは
だいたいこんな感じ。


「今、壊れてるんだ」
「うちにはトイレないんだ」
「隣のマクドナルドで貸してくれるよ」


しょうがないと
渋々と外に出ていった経験は
数えきれない。


それが明るい時分のマクドナルドならまだいいのだが、
いい加減暮れてきたころ
通りを曲がったところにあるパブまで行け、
なんて言われた日にはたまらない。


「そんなこと言うんだったら、
 この場でレコードの上にもらすぞ、このやろう!」


と、英語でタンカがきれたら
どんなにか胸がすくことだろう。


それにだいたい
貸してくれない店員ときたら
おきまりの魔法の鍵とやらを持っていて、
壊れているはずのトイレに
堂々と入って用を足すんだからやりきれない。


というわけで
ぼくたちは
トイレを気軽に貸してくれる店員の肩を持つ。
積極的に持ちますとも。


アメリカの北の街で見つけた
ナイスなレコード屋
いつもにぎわっていて、
品揃えのセンスもいい。


何がいいって
商品をきれいに管理しているのがうれしい。
指が真っ黒にならずに済む店なのだ。


そういう店に働く店員は
愛想もいい。
屈託のない笑顔と
巻き毛と無精髭がチャーミングな男子。


去年日本に遊びに行ったとかで、
ともだちが出来たから
今度東京に行ったらきみたちの店に行くよ、なんて調子がいい。


当然、トイレも貸してくれた。


用を足して
ふう、と一息。
ふと見ると
流しのところに小さなボードが置いてある。


「ベスト・クラーク・イン・タウン:●●●(名前)」


この街のタウン誌が認定した
ベスト店員ってことだ。
へえ。


トイレから出て、
彼に訊いてみた。


「ねえ、きみってベスト・クラーク・イン・タウン?」


おおおお、あれを見たの? と彼は狼狽しながら
まんざらでもなさそうだった。


ひょっとして、
あれを見せたくてトイレを貸してくれたんじゃないの?


でも、そんないじわるな言いがかりをする気はない。
彼は間違いなくナイスガイだし、
“まけて”もくれるし、
なにしろ
気軽にトイレを貸してくれるやつなんだから。(この項終わり)


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今日、古い在庫を整理していたら
突如ぞろぞろと出て来たフェイセスのレコード。


どうやらこれは
ハイファイが今の大江田さんの経営に替わるもっと前、
15年くらい昔に仕入れたレコードらしい。


ぼくは若いころ、この時期のロッドとフェイセスが大好きだった。
ロニー・レインも好きで
川崎クラブ・チッタでの来日公演にも行ったくらいだ。
だから、ハイファイで売ることに何の抵抗もない。


でも、
久々に聴いて
すごく楽しくて今っぽいと感じたのは
このベスト盤のB面一曲目、
山内テツが参加してのシングル曲だった。


邦題はちょっと短くて
「ユー・キャン・メイク・ミー・ダンス」。
もう一回聴こう。


そのあとは
「ウー・ラ・ラ」のB面を大きな音で。(松永良平


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