V.A. Lord Melody, etc. / Cook Calypso Jazz Sampler

Hi-Fi-Record2009-05-24

録音技師エメリー・クックが主宰したCookレーベル。


Cookレーベルにはぶっとびの実験音楽もあれば、数作しかないけれど、カリプソをはじめとした南国系のアルバムがある。
いわゆるフィールドレコーディング、カリプソが奏でられる現場そのものが真空パックされている。チューニングに、賑わう観客のガヤ音、物音などがそのまま聴こえたり。


本アルバムは、有名どころではロード・メロディ「Mama Looka Booboo」や、マイティ・スパロウの初期の作品を収録している。録音場所はトリニダードにハイチ、アンティグアとの記載。知られざるマイナーな楽団の演奏も貴重な資料だ。


で、うっかり見落としていたのが、A-2の"Clemendore Combo「Princess Charming」"。
「Clemendore Combo」とあったので、最初「?」だったけど、よくよく考えてみたら、というかジャケット裏をよく見たら、「Rupert Clemendore Jazz Combo」のことだった。
Rupert Clemendore「Le Jazz Primitif」! カリブ・ジャズのレア盤にして秘宝。運良く見つけても盤悪なのに高かったり、なかなか大変です。しかし、たとえブチブチとノイズがあっても許せちゃうのがCookレーベル。これぞ、フィールドレコーディングの真骨頂、かも。とにかく、この手のものが好きな方は、見つけたら"買い"でしょう。
あくまでもジャズの側に立つ、ジャズの方法に則って奏でるカリプソ・ジャズ。当時のトリニダードのグループで、こういうグループを他に知りません。後に続くのが、アーネスト・ラングリン、モンティ・アレクサンダーではないでしょうか。


当時、最先端の音響・録音システムを誇っていたCookレーベル。
ラベルに描かれている「NEW microfusion PROCESS」というフォントにもシビレる。「microfusion」というと、陽子やら中性子の衝突、サイエンスを想像してしまう。カミオカンデ、みたいな。
しかし…このペラジャケ(透明ヴィニールにペラ紙一枚を差し込んだだけ)はいただけない!
元来そういう仕様とは知らずに、「これ、ジャケをコピーしたやつじゃんか! ジャップ舐めるなYO!」と、買った店に文句を言い赤っ恥をかいてしまったことがあるから、この仕様が余計に許せなかったりする。
カーボンセラミック、アルミ合金のジャケットとか、100%リサイクル紙のゴワゴワのジャケットとか、そんなジャケットだったら悲劇は生まれなかったのに。
こればかりはしょうがないけど。


(藤瀬俊)


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