The Four Freshmen フォー・フレッシュメン / And Five Guitars

Hi-Fi-Record2009-05-29

The Cool School 14 番台のふたり


大好きな街の
大好きなレコード屋


大好きなのに
よくわからないところがある。


いつ行っても
店の半分しか商品が埋まってない。


空っぽの什器が
ごろごろと転がっている。


だけど不景気という感じでもない。
品物はいつ来ても入れ替わっているし、
お客さんも三々五々と現れる。


一番不思議なのは
この店で働いているのは
いったい何人いるのかということだ。


道路に面した入り口が中央にあって
ドアを開けると
右手に商品を準備するカウンターがあって
左手にレジカウンターがある。


その両方が少し高い台になっている。
銭湯の番台くらいの高さかな。
その番台が両脇にあって、
それぞれに50代くらいのおじさんが座っている。


店の奥にも作業スペースがあって
そこにもおじさんがいる。


では3人かというと
どうも来るたびに番台のおじさんたちは
交代しているように思えるのだ。


何年も通ううちに
どうやらおじさんたちは
全部で5人くらいいて
ローテーションを組んでいるのではないかという
ぼくなりの結論に達した。


どのひとが店主なのかわからないが、
逆に言うと
“アルバイト”と言っていいほど若い感じのひとはいない。
みんな、いい年なのだ。


そんないい年をしたおじさんたちは
いつも番台から番台へ
音楽話で盛り上がっている。


こないだは
「おまえ、先週のブライアン・ウィルソン見に行ったか?」
みたいな話をしていた。
彼らの意見は辛かったが
それは訳すのはやめとこう。


BGMの担当は
右側の番台。
ここからふと流れ出したレコードに
「何これ?」と興奮させられた回数は決して少なくない。


そのレコードを教えてもらい、
当然のように買わせていただく。


「はいよ」とレコードを上から渡してもらう構図に、
昔、銭湯で風呂上がりに牛乳を買っていたことを
どうしても思い出してしまう。


彼が代わりにかけた何かのレコードの音が
頭の中の銭湯の高い天井に「カコン」と響いた。


良いレコード屋
銭湯に似ている、かもしれない。(この項おわり)。


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「レイン」で始まり
「カム・レイン・オア・カム・シャイン」で終わる。


4人の歌と
5人のギタリストというコンセプトとは別に
雨で名曲をサンドイッチしたという趣向が好きだ。


梅雨が始まりそうな季節には
すごく聴きたくなる。(松永良平


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