前園直樹グループ、6月19日コンサートのチケットを販売します。

Hi-Fi-Record2009-06-02

今日は告知から。


6月19日(金)、
麻布十番のアトリエフォンテーヌにて開催される
前園直樹グループのコンサートのチケットを
ハイファイでも若干数販売させていただくことになりました。


前園直樹グループ。@麻布十番・アトリエフォンテーヌ。
*開場 19:00/開演 19:30
*チケット料金¥2,800(当日\3,500)(ともに税込)
*ゲスト: スムースエース/レモン


その他、コンサート及びチケットについての詳報はこちらをご参照ください。


ハイファイでの販売に関しては
大変申し訳ありませんが以下の2点を述べさせていただきます。


・販売は店頭のみ。原則として通販はいたしません。
・現金お支払いのみでの販売とさせていただきます。


数に限りがございますので
売り切れの際はご了承ください。
なお、電話、メールでのお取り置きについても承ります。
日にちが迫ってまいりますので、
早めのお引き取りでお願い申し上げます。


ハイファイへのお問い合わせはこちらの【コンタクト】よりどうぞ。


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The Cool School 16 長いドライブ その2


イエローページでの発見を頼りに訪れた店が
実はレコード地獄のごとき
莫大な中古盤の宝庫だった。


え?
それって地獄じゃなくて天国でしょ?


いえいえ、
移動に次ぐ移動で組まれたスケジュールの中、
限られた時間で可能な限りのレコードを見尽くすという作業は
頭と肉体をフル稼働させなくてはいけないハードなもの。
腕がもう4、5本と
耳と目があと6個ずつぐらい欲しい。


しかも
この日はモーテルまで5時間の移動が残されているときた。
これはなかなかの地獄の一丁目だ。


わさわさとレコードをめくっては引き抜いて
ポータブル・プレイヤーで試聴を繰り返していると
頭の奥や背中の上がずうーんと痛くなってくる。


医学的には認められていないけど、
これはたぶん、“試聴病”だね!


そうやって道の向こうとこっちを行き来しながら
ひとしきりレコード漁りに没頭し続けたころ、
あることに気がついた。


大江田さんに声をかけると
同じことを感じていたらしかった。


この店、
ここしばらく商品が動いてない。
売れてもいないし
新しいレコードも入ってきていない。
理由はわからないが
ある時点からお店としての呼吸が止まっている。
だから思ったよりも収穫が少ない。


老婦人はレジに座ってテレビを見ていた。
脇の壁には
入ってきたときは気がつかなかったが
彼女の夫と思しき年輩の男性が
日本人らしきお客と並んで写っている写真があった。


この店を訪れたディーラーたちが残していった名刺も
何枚もコルクボードに留めてあった。
日本からの名刺はジャズの店が多かった。


彼女は何も語っていないが、
この店を一緒に切り盛りしてきた夫が
今ここにいないということは何となくわかった。


「あんたたち、
 レアなのも見るかい?」


時間の少なさを悔やみつつ
ひと通り店内を見終えたところで
彼女が声をかけてきた。


店の裏手に自宅があり、
レアなレコードはそこに別にしてあるのだと言う。
彼女の案内で家に入った。
すると、そこにこの店の本当の主人がいた。


本当の主人だった男性が
横たわっていた、
という表現が正しいだろう。


何かの病気で、たぶんもう動くことが出来ない彼は
入ってきたぼくたちに目をやったようにも思えたが
声が聞こえてくることはなかった。


レアなレコード群は
この店の主人が
音楽とレコードを溺愛していたことを
彼の身代わりになって雄弁に語ってくれた。


数枚を選び出し、
自宅を辞して
店に戻った。
彼女は夫のことは相変わらず何も言わない。
夫の代わりに店を守ることが
彼女の主張であり愛情であり、
それをわざわざぼくたちが突っつく必要はない。


電卓でぼくたちの買ったレコードの合計金額をはじき出すと
彼女は結構なディスカウントをくれた。


「あたしはオールド・レフト(昔気質の左翼)でね」
彼女は笑っていた。
資本家嫌いだから安くした、という意味の
ジョークなのかもしれない。
やっぱりこのひとは頭がいい。


そのあと、
“オールド・レフト”という単語にピンと来た大江田さんは
彼女としばし60年代のフォークの話で盛り上がった。
彼女は大江田さんより一回りほど歳上で、
その時代の当事者だった。


うしろ髪を引かれるようにして
ようやく店を出た。
「また来なくちゃ」と
大江田さんはつぶやいた。
外はすっかり暗くなっていた。
これからあと5時間。
距離にして500キロを走るのだ。


しかし、
この話、
まだ終わらない。(この項つづく)


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