Peggy And Mike Seeger / Peggy ‘n’ Mike

Hi-Fi-Record2009-06-04

 昨日の続き。


 炭坑夫の悲痛な生活を描いた歌があったと書いたのは、このアルバムに納められている「Miner's Prayer」を思い出したからだ。
 炭坑の生活にまつわる歌を歌っていたとして思い出す名前には、サラ・カニンガムもある。彼女は自身の生活周辺を描く歌を残した。炭坑の歌が生まれた背景には、ケンタッキー辺りの山岳地帯に多く見られたその主の労働者の過酷な生活苦があったのだろうし、同時にそこには社会正義を求める声もあったのだろうと想像される。もしかすると労働運動もあったのかもしれない。


 ハイファイのコメントにあるように「Miner's Prayer」が高田渡の「鉱夫の祈り」の下敷きになっているのは、間違いない。「鉱夫の祈り」は、家族、労働、団らんなど、高田渡が大切にしていた要素のすべてが入っている歌だとは、なぎらけんいちさんの指摘で、確かになるほどそうだと目が見開かれた思いがした。
 アメリカのフォークソングを聴く時に、そうした耳を働かせていたのだとすると、高田渡がフォークから何を得たのか、今一度考えてみたくなる。ひとりの生活者として共振する何かがあったのだろう。それは学者の態度ではない。


 同時にこのアルバムを「ラブソングに飽きてしまった欧米の若い世代のフォーキーたちの姿勢ととてもシンクロしています」として紹介するコメントにも、目が見開かされる思いを持った。
 欧米の若い世代のフォーキーたちがルーツ・ミュージックに近づきながら創造している素直で新しい音像の響きに、このところ興味を深めているからだ。どうして彼らがルーツ・ミュージックに近づいて来ているのか、そのヒントを得られた気がした。(大江田 信)



試聴はこちらから。