Lalo Schifrin ラロ・シフリン / Between Broadway And Hollywood

Hi-Fi-Record2009-06-06

本日です!


「encore!」
 6月6日(土曜) 18:00〜
 

 DJ's 内田靖人 原田伸彦 樺沢衝一 松永良平 藤瀬俊


 Guest DJ 常盤響 大江田信 小西康陽 ...and more!


 Charge ¥1500 ドリンク別
 恵比寿  Tenement マップはこちら


で、何でラロ・シフリンのこのレコードかというと、
Tenementの場所は
ブロードウェイとハリウッドの交差点じゃなくて
外苑西通りと恵比寿東口バス通りの交差点の
すぐそばですよ、と。


お時間ある方、
是非!
遅くまでやってます。


では、このあとは
今日もThe Cool Schoolです。(松永良平


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The Cool School 17 長いドライブ その3


偶然に見つけた小さな街の
老婦人が店番をするレコード屋での買物は
予定の時間をかなりオーバーしたものだったが、
道草と呼ぶには有意義で
帰りの車の中では、しばし上気した会話が弾んだ。


季節は深い秋で
夏は9時ごろまで明るいアメリカの空も
さすがにこの時期は7時でも暗い。


それでも
運転手である弟にがんばってもらえれば
何とか日付が変わるころには
モーテルに着けるかもしれない。


安堵した気分でちょっとまどろみかけた
そのときだった。


「ない!」


大江田さんのうろたえた声で目が覚めた。


「ないんだよ、あのトートバッグが……」


買付のときに常備しているトートバッグ。
厚い布製でおおぶりのそのバッグには
いつもポータブル・プレーヤーや必要書類などを入れて
あちこちを移動している。


今回はそれを持ち運ぶ役目を
ぼくの弟が仰せつかっていた。


どうやら弟が
あの店の中をいろいろ写真に撮っている間に
そのまま忘れてきてしまったらしいのだ。


「しょうがないですね、
 これからはプレーヤーなしにしますか?」


すでにあの店を出てから一時間は走っている。
買付の行程はまだ続くが
試聴用のプレーヤーを設置している店も多いし、
何とかなるのではないかというのが
ぼくのきわめて楽観的な意見だった。


「いやそれが、
 実は今日だけあのバッグに
 毎日飲まなくちゃいけない薬を入れてたんだ……」


「え”ぇーーーーーーーーー!」


思わず弟と一緒に声を張り上げてしまった。
プレイヤーはなくても何とかなるかもしれないが、
大江田さんが体調を崩したら
買付そのものが立ち行かなくなってしまう。


「も、戻りますか」


弟が喉の奥からしぼりだすように言った。
「うむ」と答える大江田さんの声は重く、
事態の深刻さを表していた。


「ま、まず電話して確かめてみましょう」


海外での携帯電話がポピュラーではない時代なので
一度ハイウェイを降りて
ガソリンスタンドから電話を入れてみた。


呼び出し音が延々と続く。
応答はない。
そりゃそうだ、
あの店の閉店時間はとうに過ぎていた。
彼女は自宅に戻ってしまったに違いない。


……自宅の場所はわかっている。
……でも、旦那さんは病気だし、
彼女だってもう寝ているかも。


「戻ってみよう! ダメもとで!」


3人の意見は一致した。
弟は悲壮な顔つきになっていた。
責任を痛感しているのだ。


今来た道を一時間かけて引き返す
気の重いドライブが始まった。


やがて空がゴロゴロと鳴り始め
ものすごいにわか雨が降り出した。
窓を打つ雨の音がものすごい。


「大丈夫、大丈夫」
弟は誰に言い聞かせるでもなく、繰り返した。


気がつくと
制限速度を十数マイルもオーバーしている。


「おい、スピード出し過ぎだよ!」
「大丈夫、大丈夫」


闇夜と豪雨と黒雲の向こうへ
弟は脇目もふらずに
車を突っ込ませた。


長い夜の長いドライブは
まだ終わらない。(この項つづく)


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