Manuel And The Music Of The Mountains マニュエル / Mardi Gras

Hi-Fi-Record2009-06-08

 Manuel And The Music Of The Mountains という不思議な名前のオーケストラ。これこそ強者のポップス・オーケストラ・ファンに、滋味深い魅力を放つサウンドだ。


 イージー・リスニングのオーケストラには、それほどにサウンドの違いが無いと思われがち。しかし注意深く聞き進むうちに、その差異がわかって来るもの。
 ロック的なリズムを巧みに活用したポール・モーリア、気品のあるストリングスの響きを常に織り込んだフランク・プウルセル、クラシック・オーケストラの豊かな響きを継承したボストン・ポップスなど、それぞれに編曲家や主宰者の主張を感じることになる。


 マニュエルのサウンドには、ことさらの強い自己主張が無い。と同時に全体に、通奏低音のように響いている控えめな美意識があることもわかる。
 これがマニュエルのサウンドのツボだ。
 

 音楽を聴くと言うことは、他者の自己を聞くことでもある。時おり、人の声に耳を傾けたくない時、主張の強さを感じたくない時、マニュエルのサウンドはちょうどいい。平凡という名の非凡。


 マニュエルのカタログ中でも、リズムセクションの鮮やかな響きを感じる一枚だ。サウンドの際立ちが、気持ちいい。(大江田信)



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