Allyn Ferguson / Pictures At An Exhibition Framed In Jazz

Hi-Fi-Record2009-06-19

The Cool School 23 図書館


レコード屋の間だけで通用するスラング
というほど一般的でもないのだが、
共通認識として意識している言葉のひとつに
“図書館”がある。


「あの店は“図書館”だから疲れるよ」
なんて言い方をする。


さて、
どういう意味なんでしょう?


正解は
レコードが
棚に縦入れになっている店のことでした。


縦入れとは、
壁に沿って立ててある棚に
レコードの背を向けて陳列していくこと。
要するに
ぼくも含めて自宅でレコードを収納しているひとの
大半が取っている方法だ。


本棚のような収納なので
“図書館式”などと言ったりするわけだ。


この縦入れこそが
やっかいなのだ。


お客が見ることが出来るのは
わずか2〜3ミリ幅の背文字だけ。
それだけでも目が疲れるのに
確認のためにレコードを引っこ抜いていくのも
結構な作業になる。


高い場所だと
脚立なんかも必要になってくるし、
なにしろ腕を上げっぱなしにして
調べ物をするのはツライ。


作業がつらくなると
必然的に先を急ぎたくなり、
慎重さが失われ、
見落としも増える。


もちろんお店の方にも、
限られたスペースにレコードを出来るだけ多く置き、
お客の往来の自由も確保したいという大義名分はある。


だが、
結局のところ、
つくづく感じるのは
そこで優先されているのは
お客の都合ではなく
お店の都合ではないのか?


そういう発想で店をデザインしている店主は、
でかくて場所を取るアナログ・レコードの販売に
意欲を失っているくせに
安売りをして損するのはたくさんだなんて
思ってはいないか?


……なんて言い切ってしまうのはあんまりだが、
アメリカで
そういう目に結構遭っているのは本当だ。
“図書館”は、なるべく勘弁してほしいっす。


西海岸のある街に、
街の音楽情報の発信地としていつもにぎわっている店がある。


精力的にインストア・ライヴを開催したり、
渋いセンスの品揃えを若者に売る工夫を凝らしていたり、
とても印象のいい店だ。


だが、こんなにいい店にも
ひとつ解せないところがあって、
アナログ・レコードだけは
一貫して“図書館”なのだった。


あの店、レコードが見やすかったら
最高なのにな。
そう語り合ったのは一度や二度ではない。


それがある年、
何の拍子でその念が通じたのか、
レコード売り場の面積が拡張され、
一斉に横入れに変更されていたのだ。


これはうれしい!
そのときぼくたちが買ったレコードの量も
今までで最高の部類に達した。


店主らしきおじさんが
頭をかきながらこう言ったのを覚えている。


「いやー、
 レコードを棚から下ろして横にしたら、
 売上が三倍になったんだよ」


ところで
レコードを縦に入れる店が“図書館”なら、
横に入れている店は何と呼ぶべきだろう?


うん、
そりゃやっぱり、
レコード屋”! でしょ?(この項おわり)


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その昔、
プログレッシヴ・ロック・グループの
エマーソン、レイク&パーマーが
チャイコフスキーの「クルミ割り人形」をカヴァーして
「ナットロッカー」にしたのを聴いたときは
「すごいなあ」と中学生ながらおどろいた。


しかし、
そこにはちゃんとお手本があり
B・バンブル&ザ・スティンガーズという
匿名ガレージ・ピアノ・グループのカヴァー「ナットロッカー」を
彼らは再カヴァーしていたのだった。


ムソルグスキーの「展覧会の絵」を
まるまるロックでカヴァーしたことでも有名なELPだが、
そちらにもジャズでお手本(?)というか先行があった。


まあ、さすがに
このままのカヴァーとは言い難いけど。


ELPがロック界から当時受けた拍手喝采
おそらく一万分の一もアーリン・ファーガソンは受けなかっただろう。


そのお詫びも込めて
今、ハイファイで拍手喝采を送りたい。(松永良平


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