Gnawbone ノーボン / Gnawbone

Hi-Fi-Record2009-06-25

 今朝の新聞を読んでいたら、3万5千年前のフルートが見つかったとする記事と出会った。写真入りで紹介されている。12の破片として発見されたが、つなぎ合わせると長さが21.8センチ、直径約8ミリ程度のフルートとなったという。


 吹き口の形状を見ると、横位置で手に持たれて吹かれたのかどうか、もしかすると立て位置でも音が出るのではないかと思う。しかしフルートと書かれている所を見ると、横笛ということなのだろう。


 で、おもしろいと思ったのが、五つの指穴があいているという点だ。
 古くから人類はオクターブを五つの音として理解していた、という説がある。五音階説だ。ラドレミソラ。またはレファソラドレ。またはドミファソシド。またはミファラシドミ。四度のテトラコルドの積み重ねから生まれる四つのパターン。これは今や定説のはず。
 今で言うところの七音階が一般的になったのは、西洋近代になってからで、これはピアノという楽器が出来上がるプロセスと並走している。ドレミソラドで言えば、ファとシは数学的に決められた音で、これを盛り込んで「ドレミファソラシド」と演奏するピアノが出来上がった。
 

 五音階の歴史は、はるか古い。
 この笛の発見が、古くは人類は五音階だったことの実証の一つとなるのかと思って、僕はゾクッとした。3万5千年も前の楽器なんて、ちょっと想像もつかない。


 演歌の多くが五音階で、それが西洋クラシック音楽との差異であり、劣性だとする意見。かつては良く目にしたが、今ではもう言う人も少なくなった。
 アイリッシュ音楽の世界的な復権、J-Popに見られる五音階メロディへの根強い支持などなど。五音階のDNAは、多くの人々の体にまだ埋まっている。


 ヒッピー風の出で立ちの若者が演奏するトラディショナル集「ノーボン」。無伴奏で歌われる「Fare The Well」は五音階。ちょっと解りにくいが、「Famele Drummer」も五音階による伝統曲だ。
 素直な響きがとても美しい。


 ただし五つの指穴が有るからといって、このフルート、五音階楽器と断じてしまうのは、無理が有る。指穴を半分あけたり、四分の一開けたり、それらを組み合わせることで五音階をひょいと超えてしまうのが、笛という楽器のおもしろいところでもあるからだ。(大江田信)



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