O.S.T. Camarata カマラータ / The Shaggy Dog

Hi-Fi-Record2009-06-26

The Cool School 26 ドッグス その1


ぼくは
犬よりも猫が好きと
公言してはばからない人間のひとりなのだが、
レコード屋
店主のよき友だちとしてかしこまっている姿が似合うのは
断然、犬なんだと認めざるを得ない。


猫と比べてどこがどうというのではない。
レコード屋にとっての
狛犬(こまいぬ)みたいに
感じてしまうからなのかもしれない。


ぼくのお気に入りの
レコード屋の犬たちの話を
今日からしばらくさせてもらう。


最初に紹介したい犬の名は
マックス。


マックスは
初めて見かけたときから
もうずいぶんな年寄りだった。


東海岸の郊外に店をかまえるジャズ屋の愛犬で、
犬の種類にうとくて申し訳ないのだが
むく犬を大きくしたようなタイプと言えばいいのかな。


入り口のところに
両の前足を投げ出していつも座っている。
年齢からくる脱毛なのか
前足には毛のない部分が目立つ。


あまり動かないが
撫でてあげると
くんくんと匂いを嗅ぐ。


まさか
良いディーラーかどうかを
嗅ぎ分けてるんじゃないだろうな。


勤勉な店主は
ジャズ・レコードをプレミア価格で飾ることよりも
誰にでも買える価格で聴いてもらうことを好むタイプだ。
年に一回だけ
10日間ほど必ず休暇を取るのだが、
それは彼の愛するニューオリンズ・ジャズ・フェスティヴァルに
行くためだ。


だから
この店に行くときはいつも
「あれ? 今はジャズフェスの季節じゃないよね?」と
ぼくたちは話題にする。


そして
「マックスは元気かな?」とも。


マックスは
今年13歳になったそうだ。
大型犬としては、
かなりの長命の部類になる。


「マックスの前に飼っていた犬は
 ミンガスと言ってね。
 わたしはチャーリー・ミンガスが好きだからさ」


では、マックスはマックス・ローチからなの、と
訊いてみた。


「いや、
 それがマックスは
 ひとから譲り受けた時点で
 もう“マックス”という名前が付いていたんだ。
 マックス・ローチはそんなに好きじゃないんだけどね」


店主は笑った。


日本には「愛しのマックス」という曲があるんですよと
説明しようかと思ったが
うまく伝えられそうもないのでやめておいた。


そんな曲が実在しようがしていまいが
彼にとってのマックスは
まごうことなく“愛しのマックス”なんだから。


めったに吠えることもないマックスは
今日も箱いっぱいのレコードを買ったぼくたちを
うるんだ目をして見送ってくれた。


まるで多感な少年みたいだ。(この項つづく)


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ディズニーの犬映画と言えば
アニメなら「101匹わんちゃん」だが
実写なら断然、この「シャギー・ドッグ」だ。


近年のリメイクもあるけれど
オリジナルの白黒版(1959年)が最高。


ジャイヴ感覚旺盛なサントラには
スリム・ゲイラードの「フラット・フット・フルージー」も
入っている。(松永良平


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