Gary Windo ゲイリー・ウィンド / Dogface

Hi-Fi-Record2009-06-29

The Cool School 27 ドッグス その2


今回もレコード屋の名犬を紹介する。


彼の名は
ピーウィー
西海岸の店に生息している。


長い手足と
精悍なからだを持つ大型犬。


初めて見たときは
ドーベルマンかと思ったけれど、
やさしい目を持つピーウィー
乱暴なことはしない。


店主が店の中で投げるフリスビーを
嬉々として奪いに走るのが楽しみ。


お店の中は
彼が走り抜けやすいように
長めの通路が確保されていた。


最近、
お店は移転して
長い通路の代わりに
今度は彼がぐるぐる回れるスペースが出来ている。


ところで
この店は
西海岸に数あるレコード屋の中でも
ぼくたちにとって特筆すべき
アワ・フェイヴァリット・ショップ。


店主は
筋金入りのガレージ・バンド・ファン。
1950年代後半に現れた
若者たちのパーティーのために
荒っぽい演奏を得意としたグループの出したサウンド
心から愛している。


ただし、
そういうオリジナル・ガレージのレコードは
入手が難しいし、
価格も高いものになってしまう。


だから高いレコードを置かない代わりに、
彼は壁中を
50年代のロックンロール・スターや
ガレージ・バンドのレアな写真で埋め尽くす。


そして
店内のレコードは安価に据え置く。
名盤、レア盤の代わりに
興味深いと思えるレコードを売る。


キッズにとって
レコードはお小遣いで買えるものでなくてはならない。
それは
すでにおとなになったキッズにとっても同様だ。


大金で安心を買ってはならない、
きみが買うべきは好奇心とリスクを賭けたという誇りなんだ、と
無言で言っているのだとぼくは勝手に解釈している。


この店でもうひとつ学ぶのは
彼のイージーリスニングやラウンジへのまなざしだ。


50年代末や60年代初頭、
お金のない若者たちにとって
エキゾチカや
良くも悪くも行き過ぎたサウンドを持つイージーリスニング
異世界のムードを演出し、
パーティーを怪しく彩る重要アイテムであったという
もうひとつの歴史をぼくに妄想させる。


ガレージ・バンドの白黒写真に囲まれた店で
イージーリスニングのレコードを見つけるのは
ぼくにとって最高のシチュエーションなのだと言っておきたい。


おっと、
間違えた。


ガレージ・バンドの白黒写真に囲まれた店で
名犬ピーウィーの相手をしながら
イージーリスニングのレコードを見つけるのは
ぼくにとって最高のシチュエーションなのだと言っておきたい、でした。


ピーウィーには
かって相棒となる小さな犬がいたのだが
残念なことに亡くなってしまった。


次にぼくらが行くころには
新たな相棒がいるかもしれない。(この項つづく)


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NRBQのホーン・セクションである
ホール・ウィート・ホーンズに
キース・スプリングの後任として
一時期参加していたゲイリー・ウィンドのソロ。


名プロデューサー、ハル・ウィルナーの
初期の仕事であることと、
NRBQが参加した曲が数曲あることで
ファンには知られている。


「猫ジャケ」の本が結構売れていて
次は「犬ジャケ」が出てもいいんじゃないかと
思ったりしているのだが、
世の中はなかなかうまくいかないようで
その話の続きを聞かない。


「犬ジャケ」の本がもし作られるなら
どこかにゲイリー・ウィンドの“犬顔”を
紛れ込ませてみたいというのが
ぼくのささやかな欲望のひとつだ。(松永良平


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