友部正人 / なんでもない日には

Hi-Fi-Record2009-07-09

 友部正人の「なんでもない日には」でドラムを弾いているのは、島田和夫さんだ。
 裏ジャケットにクレジットされた名前の後ろに(トリオレコード)と書かれているのは、彼が憂歌団に在籍していて、その憂歌団がトリオレコードのアーチストだということからだろう。ただしこのアルバムには、他の憂歌団のメンバーは参加していない。


 ドラムの演奏はよく「叩く」と表現される。もちろんそれが最もふさわしい表現だということは、わかる。しかし、最近になって段ボール・ドラムを弾いているドラマーとして島田さんを知ったぼくのような者には、島田さんの演奏を表する場合に、叩くという言葉を使いづらい。弾く、がいい。シンガーの後ろでドラムを控えめに鳴らしている島田さんのドラムからは、そのような響きがするのだ。


 「なんでもない日には」に収録の「けらいのひとりもいない王様」のイントロは、友部さんのギターと島田さんのドラムだけだ。試聴音源に丸々は入れられなかったのだが、イントロの16小節、30秒以上がギターとドラムだけ。ブラシでスネアだけを鳴らしているような響きが聴こえる。淡々としているようでいて、これがそっと絶妙に歌っているドラムなのだ。



 島田さんとは、ぼくのやっているグループ、林亭のライヴで、二度ほどご一緒したことがある。
 最初は2年前の春。
 あまり多くを語る人ではない。ぼそっ、ぼそっと呟くように話をされる方だ。
 その島田さんが、ぼくらのライヴのあとに、こんな風に言われた。「林亭、ええなあ。進歩しとる」。このあいだの4月のライブ、二年ぶりにご一緒した時のことだ。 
 なによりうれしい一言だった。


 さて、その林亭、ライヴをやります。
 再始動のきっかけとなったライヴをやった会場、ラ・カーニャで。
 よろしくどうぞ。(大江田 信)


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