Jim And Jesse / Twenty Great Songs By Jim And Jesse

Hi-Fi-Record2009-07-11

 ジョン・ブライオンのライブ。この日の後半に行われたジャム・セッションは、ブルーグラスだった。
 

 メンバーがステージの上で、次にやる曲を相談している。なかなか決まらない。フィドルの女性が、なにか曲を提案すると、誰だかが"たぶん知らないなあ"と言ったのだろう。その瞬間に彼女は、「Super Super Easy!」と大声で叫んで、すぐにフィドルを弾きだした。


 彼女が歌うフレーズをほんの一瞬聞いて、他のメンバーが入ってきた。ブルーグラスにロックなギターがぐいっとねじ込まれたような、勢いのいい演奏が始まった。
 ブルーグラスでは、必ずしもその曲を知らなくとも、なんとか付いて行ける。参加できる。そういう音楽なのだ。


 ナッシュヴィルにステーション・インというブルーグラス専門のライヴハウスがある。
 日曜日の夜。
 総勢8人ほどで車座になって円陣を組んだミュージシャンたちが、セッションをする。それも全員がアマチュア。真ん中に座ったセッション・リーダーの長老氏がギターを弾きながらふと歌いだすと、周囲のミュージシャンたちが、それとなく付いて来る。ワン・コーラスが終わると、長老氏が次にソロ演奏するプレイヤーの方を向いて名前を呼ぶ。するとソロ演奏が始まる。バンジョーフィドルマンドリン、ドブロ、ベースなど、一通りそろったミュージシャンたちが、一回りソロをとり、その合間には長老氏が歌い、ヴァースではコーラスになる。
 ぼくらが訪問した日曜日は、そんなアマチュア・セッション・ナイトだった。


 それはそれは素晴らしかった。ゆるやかにグルーヴする2ビート音楽の楽しさ、ビートの深さ、微妙な揺れ、ソロ演奏の巧みさなど、この音楽の楽しさを堪能した。
 そして誰もがおおよそを知っている曲、それを共有していることから生まれるセッションの楽しみを見た。
 ある時代までのジャズも、そういう音楽だった。鑑賞のみならず交歓を楽しみとする、そういう種類の音楽なのだ。


 スーパー・スーパー・イージーブルーグラス・クラシックをひとつ。「Air Mail Special」。
 シンプルなメロディ。シンプルなコード進行。
 しかしこのテンポを自分のものとして演奏するのは至難の業だ。
 このスピード感が、50年代から60年代にかけての"エア・メール"だったのだろうと思う。(大江田 信)


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