Jon Lucien ジョン・ルシアン / Rashida

Hi-Fi-Record2009-07-12

勝手に Cool School #01 魂のルフラン


ふるふる、ぽわーん。


シェイク、シェイク、BOOGIEな胸騒ぎ。


ソレはコントによくあるようなダンスだったけれど、入れ込み具合が違っていた。


初老の"ママさん"といった気の強そうな女性の店主が営む、セカンドハンズ(中古)を主に扱うこじんまりとした雑貨店での話だ。


そのお店を訪れたのは、もう日が沈む夕暮れ時だった。
店の前には、白い砂浜が広がっている。まさにサンセット・ビーチといった趣きの広くて美しいビーチ。
観光客も多く、この日は終日賑わっていた。


大江田さんはバチャバチャ若者数人と水遊び。
松永さんご兄弟は、ビーチらしい白いテーブルを囲み、現地の人の交えてワイワイ雑談していた。
あれ、"買い付け"じゃなかったの…。
僕は独りビーチの向かいにある雑貨店に行き、棚の一番隅にあった200枚程のレコードを物色した。


うおっ! なんだこれ! やったやった!
南米やアフリカの怪しげな60~70'sファンクものばかり。「木村芳子/リオの夜」もなぜか発見。
ヤベー! パネぇ! と、僕がはしゃいでると、それを見ていたママが気の毒そうにポツリ。


「それは売り物じゃないの。」


はぁ〜、じゃ、置くなよ…とうなだれていると、続けて一言。


「そのレコード、先週死んじゃったウチの娘のものなの。」


気が重くなった。と、同時に「なんてぶっ飛んだ娘だ」とも。
亡くなった理由は訊かなかった。


気がつくともう日は落ちていて、店の外は真っ暗だ。


「おーい、藤瀬ちゃん…、こっちこっち。」


大江田さんに呼ばれて外に出ると、暗がりに眩く光るノート・パソコンのモニターを松永さんが指して手招きする。
僕は促されるようにモニターを覗き込んだ。


「近くのモーテルに泊まるんだけど、この辺り、"でる"そうなんだよね…。」と、大江田さん。


モニターの画面には、白い発光体、そう人魂がポワワーンと動くYoutubeの動画が流れていた。


すると、店のママが横から急に


「あぁ、それアタシの娘だよ。ファンキーでしょ! 昨日録ったの。アハッ(笑)」


腑に落ちた。
だって、その人魂、めちゃくちゃ激しくリズミカルに動きまくってたから! 
でも、ファンキーじゃなくてキンキーだと思う、ユーの娘。禁忌。
死んで肉体が失われてもなお、ダンスをしまくってる彼女。
モニターを見つめながら僕らは、誰かが笑うのを待っていたけど、結局誰も笑えなかった。
そのダンスが先に書いたように滑稽を通り越して、尋常ならぬ気を発していたせいもあるけど。
それにしても思い思いにダンスしまくって、成仏できないなんて、なんて我が儘な人魂。
新しいダンス・ミュージック待ち、だったのだろうか。
それとも、マイケル・ジャクソン待ち、だったのだろうか。
とにかく怖いものは何でも苦手な僕は彼女の成仏を祈った。
でも、「ほら、ママさんも祈ってよ(笑)」とは、言えなくて。


この後、モーテルでは"ベーコンが踊り出す"などのB級ホラー・サスペンスがあったのですが、割愛。


以上が、僕が昨日見た夢の話。
「"夢オチ"を書くようになったら、物書きおしまい」なんて言わないで下さいネ。

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Jon Lucien ジョン・ルシアン / Rashida


夢で見たカクカク小刻みに揺れる、あのダンス。
地獄にいっても天国にいっても、迷惑がられそうな人魂だった。
彼女の音楽の趣味が理解に欠けるものだけに。


ジョン・ルシアンのこのアルバムは、ジャケットのアートワークを含め、どこか涅槃を想わせる。
「Satan」など、この世から少しはみ出したダンス・ミュージックように僕には聴こえる。


フリー・ソウル。夢で見た人魂はとても自由だった。阿呆っていうか。
あんな風に踊れたら気持ちいいだろうな。


(藤瀬俊)


P.S. 前回愚痴をこばした「児童ポルノ改正案」ですが、アニメ、漫画などの被害者のいない創作物は、規制の対象から外されたみたいです。少しホッとしましたが、あとは"単純所持"についてですね。※リンク先はwmvの動画です。エロじゃありませんので、ご安心下さい。


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