Caetano Veloso カエターノ・ヴェローソ / Cinema Transcendental

Hi-Fi-Record2009-07-14

The Cool School 33 はじめてのかいつけ その2


2001年2月、
生まれて初めての買付にやって来たぼくは
車を運転する大江田さんに
いきなり地図を見て目的地までナビをせよと命じられた。


アメリカの道路地図というものを
一度でもいいから
しげしげと見たことのある方には
わかっていただけると思う。


確かに
アメリカの道路には
どんなに細くても短くても
必ず名前がついている。


地図から目を上げて
今度は街並を見てみる。
すると、
住宅や店舗には
たいていの場合、「39」とか「117」とか数字が振ってある。


つまり、
イングルウッド通りの46番地であれば、
地図からその通りを探し出して
通りにたどり着いたら
窓からその数字を書いた店を見つけ出せばよい。


しかし、
見つけ出せばよい……って言われても、
これが簡単じゃないのだ。


まず細かい地図から通りの名前を探し出すのがひと苦労。
索引ページから名前を見つけだしても
その指示は「何ページのE-4」とか、
縦横のガイドラインから大まかな地域を割り振っただけの
不親切極まりないもの。


ようやく、そこから通りを見つけ出したら
今度は現在地からそこを結ぶ最短経路を割り出さねばならない。


これは今でもアメリカの地図業者さんに言いたいのだが、
肝心の番地が地図にはほとんど記されていなかったりする。


だから、
せっかく交差点に到着しても
左右のどちらに曲がったらいいかもわからず
「ゴメンナサイ!」と頭を抱えた、なんてケースは
決して少なくない。


このトラウマが抜けないのか、
今でもぼくは
「右です!」と言いながら
指は思い切り左を指したり、なんてことを良くしでかす。


そしてもうひとつ厄介なのが
高速道路の存在だ。


アメリカのハイウェイは
ご存じの通り、主要大都市などを除いて
基本的にほぼすべて無料のフリーウェイ。
住民税などとは無縁の旅行者には
こんなにありがたい話はない。


しかし、
このフリーウェイが
ナビ初心者のぼくの前に大きく立ちはだかることになる。


高速道路と言えば
最初に料金所みたいなところを通るから
一回減速してチケットを受けとって……、
そんなことを思うじゃないですか!


ところが、
この国ときたら、
まったく止まらない。


ひょいっと分かれ道を右に入ったら
はい、もうそこは待った無しのフリーウェイ。
時速65マイル(約100キロ)、グイーン。


あわあわあわあわ……とナビの男(ぼく)は
地図のページすら見失って
泡を吹くばかり。


そしてこの買付初日、
モーテルは空港からすぐそばだと聞いたにも関わらず、
どこをどう間違ったのか
車は遠く目的地を離れ、
何故かフリーウェイにまで乗っかって、
はるか遠くまで走らされていた。


「一度降りて
 場所を確かめよう。
 そしたらきっと戻れるから」
大江田さんは落ち着き払ってなぐさめてくれたが、
ぼくはと言えば
とんでもないところに、
とんでもないことをしに来てしまったと
ひたすら途方に暮れるばかりだった。


まだ買付の「カ」の字も
始まっていないのに。(この項つづく)


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ここのところ
しばらく考えていることがある。


買付から帰ってきて
仕事に復帰した先週の日曜だったはず。


レコードを用意していて、
確かにぼくは聴いたのだ。


空耳アワー」に応募出来そうな空耳ソングを!


しかし、夕方からのひどい時差ぼけで
その曲をメモすることを忘れ、
さらに一週間が経過した今、
どんな空耳だったのかすら思い出せずにいる。


ああ、それを思い出したい。
目下の大きな悩みのひとつです。


今日、アップされたこのカエターノ・ヴェローソの傑作にも
空耳がひとつ入っている(内緒)。
でも、こないだ聴いたやつは
絶対それよりおもしろかったんだがなあ……。(松永良平


試聴はこちらから。
なお、試聴は空耳ネタではありません。