Michael Monroe マイケル・モンロー / Summer Rain

Hi-Fi-Record2009-08-05

 とある女性作家の方達と雑談をしているうちに、そのなかの一人の方が、マイケル・ジャクソンと至近距離で目を合わせたという話になった。
 どこかのホテルの喫茶室で。たぶん20年近く前のことだったはず。
 調べてみると、彼が日本ツアーの最中に閉園後のディズニーランドを借り切ったのが1987年9月24日のことらしい。とすると、ぼくの記憶とも符合している。
 たぶん彼女は、この日、マイケル・ジャクソンと目を合わせた。


 マイケル・ジャクソンがディズニーランドに来園することを彼女は事前に知っていて、ロープで仕切られた通路のすぐ横に立っていた。彼が園内に入ってくると、周囲の女性たちからものすごい歓声が上がった。だれもがマイケル、マイケルと叫んでいた。


 巧みな彼女の語り口を聴いていると引き込まれてしまい、なぜ?とか、どうして?とかいった疑問は浮かんでこない。それにしても、なぜ彼女はその日にディズニーランドにいたのだろう?


 誰もがマイケルに振り向いもらいたくて、声をかけて手を振っている。
 彼女は、一計を案じた。彼に振り向いてもらうためには、「マイケル!」と叫んでも駄目だ。「マイケル」は日本語英語だ。そうだ、「マイクル!」と呼びかけよう、アメリカ人の発音で。


 彼女は自分の前を行き過ぎるようとしている彼に、そっと「マイクル!」と声をかけた。すると彼は、こちらを向いた。そして彼女に、にっこりと微笑みかけた。
 周囲から彼女に寄せられた羨望のまなざしを、彼女ははっきりと覚えている。少し誇らしい気持ちとともに。


 こんな話だった。ユーモアたっぷりな彼女の話術に大笑いをしながら、「マイクル」という発音を、ぼくはこのとき体に染み込ませるようにして覚えた。
 

 そうすると、さしずめ彼はマイクル・モンロー。いつか北の街で合うことがあれば、そのときにはぼくもそっと「マイクル」と呼びかけてみようと思う。


試聴はこちらから。