Les Paul And Mary Ford / Hits Of Les And Mary

Hi-Fi-Record2009-08-19

 昨日のブログで松永クンが,「エラ・イン・ベルリン」のことに触れていた。
 同じバイト先で買い取りで「エラ・イン・ベルリン」が入荷すると,必ずそれをかけていた女性のことを記しているが,このレコードについては僕も想いがある。


 中学から高校にかけて,家の近所にあったジャズ喫茶で,11時の開店のレコードとしてお決まりのようにかかっていたからだ。
 名前は「モダン」という。中央線の国分寺駅の北口から,ほんの1分ほどのところ。小平に住んでいたぼくは,自宅から自転車で通った。
 ある夜の閉店の音楽は,オスカー・ピーターソンの「ヒム・トゥ・フリーダム」だった。


 この店ではいろいろな曲を知った。
 「エラ・イン・ベルリン」で「ハウ・ハイ・ザ・ムーン」を覚えた。1940年にミュージカル・ナンバーとして発表され,最初のヒットはベニーグッドマン楽団でヘレンフォレストが歌ったもの,そしてこの曲の最良のヴァージョンは「エラ・イン・ベルリン」におけるエラ・フィッツジェラルドの歌唱だという意見もある。確かに,そうかもしれない。なにしろ素晴らしくて,人知の最良に触れたような気がして,思わず呆然としてしまう。


 そういえば先日のブログで書いたレス・ポールのショウのオープニング,レスをステージに迎え入れる時の音楽は「ハウ・ハイ・ザ・ムーン」では無かったっけ。クロージングにレスを送り出す時の音楽が,「世界は日の出をまっている」。違ったかな。


 スタンダード曲を,さまざまな演奏で聴くというのは,実はとても楽しいことだ。ぼくは10代の半ば頃,ジャズ喫茶の「モダン」のソファーに座って,おそるおそるジャズの面白さを覗き見ていた。(大江田信)