Annette アネット / Dance Annette
The Cool School 54 すいません、ちょっとお尋ねしたいんですが。
買付を重ねて
お店と親しくなってくると
普通のお客さんは入れない在庫のスペースまで
入って見ていっていいよと言ってくれたりする。
そうなればしめたもの。
店頭に出ることなく眠っている良品を探し当てるチャンスだ。
また店員以外には開放していないトイレを使わせてもらったり、
水や飲み物をいただいたり、
それなりに恩恵はあるものだ。
ときどき困るのは
お店の人間と間違われて
お客さんからいろいろと質問を受けたりすること。
典型的な日本人顔をしているぼくが
アメリカのレコード屋で働いてるわけないだろと
最初は思ったものだが、
多国籍化が進むアメリカでは
ぼくみたいな人間がいたって不思議でもないのかと
最近は考えるようになった。
ところで
その人違いで受ける質問というのは
要は「●●のレコードはどこにありますか」とか
「処分したいレコードがあるんだが」とか
そういうものが多い。
店主と客のやりとりを耳を澄まして聞くのも
買付け中の愉しみだったりする。
「あの、すいません、
家にあるレコードを売りたいのだけど」
中年男性が店主に相談している。
「何を売りたいのだ」
店主は逆に質問した。
男性の答えは
1950年代に一世を風靡したポピュラー・シンガーとか
そういうものだった。
言い終わるが早いか
店主はすぐに切り返した。
「●●●や▲▲▲を買う人間など、もうこの世界にはおらん」
その断定口調が、あまりに見事だったので
思わず吹き出してしまった。
しかも、
店主は男性に対し
「だいたいあんなもんは……」と
滔々と説教を始めてしまった。
軽い気持ちでレコードの売却を訊ねただけだった男性にしてみたら
いい迷惑。
なんでこの歳になってしかられなくちゃいけないの。
でもおじさん、
店主のおっちゃんの言うことをよおく聞いておいて。
ガミガミと浴びせる罵詈雑言の中に
「そういうのはスリフトストアが引き取ってくれるぞ」とか
なにげにアドバイスが入ってるんだから。
アメリカのレコード屋で
ひとにものを訊ねると
ときどきちょっとおかしなことが起こるというお話でした。(この項おわり)
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先日、
ギタリストの高田漣さんがハイファイを訪れ、
ちょっとした収録をする機会があった。
高田さんが自身のHP「Behind The Disk」上で
シリーズ掲載している「青年の試聴」がそれ。
その第5回と第6回で
ハイファイをご指名いただいたのだった。
お時間ある方は
是非ご一読を。
ぼくは、
ちょっとやせないといけませんな。
アネットとでも踊って。(松永良平)