Lenny Dee レニー・ディー / The Lenny Dee Tour

Hi-Fi-Record2009-09-04

The Cool School 55 エリック その3


久々にエリックのことを書こう。
どれくらい久々かというと
43回ぶり。


前のは忘れちゃったなという方は
こちらこちらにどうぞ。


太っちょのエリック。
独身のエリック。
初めて会ったときよりいくぶん老けて
仙人みたいなヒゲもずいぶん伸びたけれど
眼鏡とつぶらな目も含め
顔のパーツには少年時代の面影もしっかり宿っている。


エリックの店はエリックのものだが、
経営パートナー的存在の男性がもうひとりいて
週に2〜3日ほどはエリックは休みをとる。


きりっと理知的な顔をしたそのパートナーは
レコード屋に働いていなければ
どこぞのオフィス街で会議にでも出ていそうな風貌。
ひげも毎日剃るし(たぶん)
だらしなくTシャツのすそを出したりしない。
そもそもTシャツなんか着ない。
彼はいつもきちんとした身なりで店に立っている。


もちろんエリックと一緒に店をやっているぐらいだから
決して悪いやつじゃない。
あいさつだって返してくれるし。


無駄にお客に話しかけたりしないで
静かにPCに向かったり、レコードの整理をしたり。
きっと彼の出番の日の方が
店の仕事そのものは、はかどっているのかもしれない。


ただ、ひとつ言いたいのは
彼の選ぶBGMのセンス。
オールディーズよりは明らかにちょっとモダンなロックを好む彼の趣味を
どうこう言うつもりはないんだけどさ、
硬いんだ、音が。


ずっと聴いてると
単に聴き流してるはずなのにどうにも肩が凝ってくる。
エリックの選曲とどこが違うって
うまく説明出来ないけれど、
彼の場合、
愛情が聴いてる自分だけにしか投下されてない気がする。


そんなことを気にしてしまうのも
全米のレコード屋でいろいろなBGMを聴いてきたぼくたちの
余計な職業病なんだろう。


エリックが店にいるかどうかを見極めるのは
実は簡単だ。


彼の愛車は
サイケな色彩にハンドペイントされた小型ヴァン。
それが駐車場に停まっていたら
今日はエリックの日。


だからぼくたちは
ニコニコしながら店に入る。


エリックの日に店にいたい理由は
もうひとつある。


買付が終って
いよいよ会計というとき、
ぼくたちがクレジットカードを渡すと
大きなからだで小さな決済マシーンに向かって
「さあ、この魔法のカードを使いますぞ」と
彼は魔法使いのふりをする。


そのお決まりのギャグを
ぼくたちはもう十年も聞き続けているのに
少しも飽きない。
それをさも楽しげに口にするエリックが好きだし、
今度も来年もいつまでも
そのギャグを聞いていたいと思う。


いつからか
それはぼくたちとエリックにとっての
次に会うときもお互いに元気にレコード商売を続けていようぜ、っていう
何よりも確かな「シーユーアゲイン」の誓いになっているような気がするのだ。(この項不定期につづく)


===================================


先日、
ハイファイ店内でちょっとした取材が行われた。


雑誌「PAPER SKY」誌上での
ミュージシャンがあるジーンズ・メーカーのジーンズを履いて
好きなレコード屋に出向いて
好きな一枚を選び
それを写真で撮影するというピンナップ広告企画。


その企画にハイファイを
選んでくれたのが
サケロックのハマケンこと浜野謙太さん。


書店などでお見かけの際は
是非、チラ見してみてください。


雑誌のコンセプトが「地上で読む機内誌」ということなので
レニー・ディーの世界旅行アルバムでも聴きながら
ぱらぱらめくってみるとする。(松永良平


試聴はこちらから。