実川 俊 / ふりむけば50億

Hi-Fi-Record2009-09-11

The Cool School 59 そのレコードをどうするの?


前回、レコードを曲げてお皿を作っている店主のことを書いた。


その例にもれず
アメリカのレコード店主は
売り物にならないレコードの再利用に熱心だ。


持ってけ泥棒な値段でのバーゲンは当然。
豪快に「無料でどうぞ」箱を設けている店だって
決して少なくない。


レコードを売り物に改造するという意味では
よく見かけるのはコースター。


LP中央のラベル部分をうまく切り取って
縁を熱処理して丸みを出せば、
ハイ、出来上がり。


おいくら?
ひとつ3ドルです。
うーん、ちょっと高いかな……。


シングル盤を数珠つなぎにして
窓のブラインド代わりってのも、よくあるパターンかな。


ジャケットだって
捨てておくのはもったいない。


三方の縁を切り取って
盤を保護するための当て板に使ったり、
美女ジャケをポートレートとして提供したり、
廃ジャケの使い道もいろいろ。


東海岸のある店では
ジャケの一部をポストカード大に切り抜いて
一枚1ドルで販売していた。


思いがけないジャケが
思いがけない構図で切り取られていて、
これはこれで批評なのかもなとも思ったり。


唯一、欲しいかもと思えるのは
今度はちょっと手間がかかった仕掛けで
壁掛け時計にしたもの。


DIY系のホームセンターで売っている(らしい)
時計キットで作るのだという。


どうせなら時報
そのレコードの音で鳴りゃいいのだが。
それ、売れると思います!(この項おわり)


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情報社会とは
たまにはありがたいもので
てっきり謎の日本人SSWだと思っていたこの実川俊なる人物が
アニメ「キテレツ大百科」でおなじみ
はじめてのチュウ」の生みの親であり歌い手
「あんしんパパ」であるということがわかった。


90年代には
あの歌は不遇時代の山崎まさよしが歌ったというウワサが
まことしやかに流れていたこともあった。


実川氏のデビュー・アルバムには
はじめてのチュウ」から振り返れば
なるほどと思える面白さの種が結構蒔かれている。


曲目もいちいち変なのだ。


「博士の浮気」「暗殺研究所」「とび始めた天使」「スキャンダルを追って」
「三時のホットケーキ」「遅刻の気分」「プリティ・ボス」
「刑事(デカ)とホステス」「愛してスーパー・スター」
「お殿様感傷旅行」「鬼にかえろう」「アンニュイ」


とりあえず
一曲も中身を予想出来るタイトルがない。


はじめてのチュウ」まで十年ほどの時間はかかったけれど
このひとの中で決して折れない何かがあったんだなと確認出来る出発点だ。(松永良平


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