V.A. Slam Stewart / New York New York, Sounds Of The Apple

Hi-Fi-Record2009-09-14

The Cool School 60 グリニッチ・ヴィレッジ1989 その1


9月12日の大江田さんのブログで
“ニューヨーク経験豊富な松永クン”という記述が登場するが、
ちょっとその表現には異論がある。


だって
ハイファイで買付に行くようになる前に
ぼくがニューヨークに行ったのは
1989年と99年の2回だけ。


それで“豊富”を名乗るのは
おこがましいもいいところ。


一番最初の89年は大学生の貧乏旅行。
このときは2週間ほど滞在したが
セントラルパークとワシントンスクエアパークの間を
毎日いやというほど歩き回ったので
多少の覚えはあった。


そのときの旅は
最後に現金を500ドルほど盗まれてしまうという
劇的なハイライトがある。
その顛末、確かどこかに書いた気もするのだが、
まあ今日は書かなくていい。


おこがましいとは言え、
89年のニューヨーク体験は
今にして考えればかけがえのないものだった。


当時のマンハッタンはまだ治安が悪く、
そのせいかホテルも今よりずっと安かった。
当時、ぼくが一泊50ドルで逗留していた
ワシントンスクエアのすぐそばのホテルは
今、一泊200ドル近くする。


ホテルから北側に歩いて2ブロックほどのところに
中古レコード屋が並んで2軒あり、
とりあえずそこには毎日通っていた。


おもしろいのはその名前で
一軒は「リヴォルヴァー」といい、
もう一軒は「イッツ・オンリー・ロックンロール」といった。


ビートルズVSストーンズだったのだ。


中古LPの量ではリヴォルヴァーの勝ちだったが、
イッツ・オンリー・ロックンロールには
ひとついいところがあった。


店に電話がかかってくると
店主が「イッツ・オンリー・ロックンロール!」と言って電話に出るのだ。


電話の第一声が
店の気概を表明するタンカになっている。
そこがいい。


ワシントンスクエアから南は
いわゆるグリニッチ・ヴィレッジ文化圏。
ニューヨーク大学、ソーホー・エリア、
名門ジャズクラブやフォーククラブが軒を連ねる。


その界隈にあったレコード屋のうち
一軒は値段がバカ高いのだが
こしゃくなことに健在。
もう一軒は
最近西側に支店も出したようで
商売としては何とかうまくやっているらしい。
屋号が当時と変わっているような気がするが
ぼんやりとしていて思い出せない。


レコード屋の中に猫がいるのを見たのは
89年に行ったこの店が初めてだった。


89年のニューヨークでのレコード話、
もう少し書きたくなってんで続けていいですか?(この項つづく)


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ニューヨークと名の付く曲の中で
たぶん一番好きなのは、
このアルバムでスラム・スチュワートが歌う
「サイドウォークス・オブ・ニューヨーク」。


鼻唄すれすれの至芸になっている歌がいいのは当然だが、
一番いいのは
この曲のテンポだ。


ニューヨークを歩くということの
素敵さを完璧に伝えてくれるウォーキング・テンポだと思う。(松永良平


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