Steve Golley スティーヴ・ゴーリィ / That’s My Way

Hi-Fi-Record2009-09-15

The Cool School 61 グリニッチ・ヴィレッジ1989 その2


1989年のグリニッチ・ヴィレッジ。
レコード屋で思い出す店はまだいくつかある。


観光客が歩くにはちょっと危ないよと言われていた
ヴィレッジの西側にも気になる店はあった。


道路と建物の間に幅広の溝があり、
実はそこは半地下へ降りる階段になっていた。
その階段の上に
「Records」という看板が見えたのでふらふらと降りた。


店に入ってぎょっとしたのは
店員とその仲間と思しき若者たちが3、4人。
全員が真っ昼間からビールを瓶でラッパ飲みしていた!


今でこそ
アメリカ人にとってビールはアルコールに入らないという感覚を
肌身を持って知っているが
当時は「こりゃやばいところに来た……」と
震えながらレコードを見て
一目散に脱出してしまった。


ヴィレッジの西にある大通りを南に歩くと
長く商売をやっているオールディーズ・ショップがある。


この店、
広さはハイファイの半分もないのだが
レコードは数十万枚あるという。


ものすごく分厚い古今東西レコード辞典みたいな本が
カウンターの前に置いてあって、
「お前の欲しいものは何でもあるから
 ここから探してリクエストしてみろ」と店主がいうのだ。


ものは試しで
ニール・イネスは何かあるか?」と訊いたら、
何やらどこかに電話をしだした。


その電話は地下の倉庫に通じていて、
やがて床に空いていた幅30センチほどの細長い穴から
ロープを使って店主が何かを引っ張りだした。


「ほれ」


がーん。
ニール・イネスの「テイキング・オフ」ありました。


しかし、
日本で買うより高い値段がついているのには閉口した。
この店、
店頭価格だけで言えば、
アメリカで一番高い部類に入ると思う。


別に店主にすごまれたわけでもなかったが
これも勉強と思い、
そのニール・イネスは購入した。
でも、もう二度と行かないぞ、とも思ったけど。


ちなみにこの店、
去年の秋に前を通ったら
まだまだ健在だった。
今もまだ、あのやり口でレコードを引っ張り上げているのだろうか。
それだけは知りたい。


さて2週間の滞在も終わりに近づき、
ホテルの部屋には100枚近いレコードが溜まった。
これをどうやって持って帰ろうか。


……そう、郵送なんて考えちゃいない。
ぼくはこれを手荷物で持って帰るつもりだった。


その顛末を書かなくちゃいけないから
あと一回延長しよう。(この項つづく)


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ニューヨークシティではなく
ニューヨーク・ステイト。


マンハッタンとウッドストックとナイアガラの滝が
同じニューヨーク州にあるなんて
頭ではわかっても実感はしづらいものだ。


そういう違いを
音で実感させてくれるのが
ニューヨーク州のシンガーソングライターたち。
このスティーヴ・ゴーリィも、そのひとり。


都市の喧噪とはまったく違う
人里離れた土地で
限られた家族や友人たちとふれあう音がそこにはある。


ニューヨーカーと呼ばれるひとたちが孤独を歌うのが好きなのに
ニューヨーク州のひとたちは
人や自然とのつながりを歌うのが好きというのも
なんだか面白い話だなと思う。(松永良平


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