Caravelli カラベリ / Greatest Hits ”Disque d’Or”

Hi-Fi-Record2009-10-01

 50年代末にフランスのコレード会社、ヴェルサイユからデビューした際に、カラベリがアーチスト名として用いた名義は、カラベリと彼のマジッック・ストリングスだ。


 アレンジャーの名前をまず置いて、その後の彼のオーケストラ、あるいはストリングスなどと組み合わせてアーチスト名を表記するのは、かねてからの欧米のポップス・オーケストラの通例で、カラベリの場合もそれを踏襲している。
 パーシー・フェイスの場合は、パーシー・フェイスと彼のオーケストラ、レイ・コニフの場合は、レイ・コニフと彼のオーケストラとコーラスと表記するのが欧文の直訳になる。60年代初頭の日本盤ではそうした直訳的アーチスト名表記が用いられていたが、CDの時代になってからは、パーシー・フェイス・オーケストラ、レイ・コニフ・シンガーズとされるようになった。


 カラベリの場合はというと、作品がコロムビアを通してアメリカ、南米諸国、日本のほか、オランダやスペインなどのヨーロッパ諸国に配給されるようになるにつれて、カラベリ・グランド・オーケストラと表示されるようになる。何時の時点からなのか正確なところは分からないが、このあたりのことをインタビューの際にご本人に聞いたところ、間髪を入れずに返ってきた答えは、前の名前の方がよかったよ、というコメントだった。


 レコード会社の意向に沿うカタチで変えたんだけど、前の方が良かったよ。ストリングスって入っている方が、いいに決まってるじゃないか。こんな風にコメントしていた。
 思わずストリングスは好きですか?と、問い返した。今にして思えば愚問だったと思うが、彼は、そりゃ、そうさという顔をして、こちらを向いて笑った。


 名前が変わったからと言って、彼のサウンドの色合いが変わった訳ではない。
 カラベリ・グランド・オーケストラ名義の作品を、「カラベリと彼のマジッック・ストリングス」の方がよかったというムッシュのコメントを思い出しながら聞いてみるのも、また一興と思う。(大江田信)