Charlie Byrd チャーリー・バード / Jazz Recital

Hi-Fi-Record2009-10-10

 クラシック風にポピュラー・スタンダードを演奏する企画作品。


 アルバム2曲目に収録されている「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」では、元歌通りにテーマを弾いた後に、おもしろい展開が用意されている。フレーズが持っている細かな譜割りが省略されたり、不意にワルツになってみたり、八分音符を並べるようにしてメロディを加工して弾いてみたりと、技巧が加えられる。そこに見られるのは、なるべくシンコペーションを殺し、付点音符や八分音符を減らしてメロディをフラットに弾くことだ。おそらくクラシック・ギターの雰囲気に近づけるために用いられたのだろう。アルバム全体の持つ美意識の中に「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」がすんなりと収まっている。「A Foggy Day」でも同種の手法が用いられる。


 そんなことに気づくのは、メロディそのものが丁寧に変奏されているから。
 アドリヴのパートに入ると、それまでのテーマのコード進行は残るけれども、元の歌のフレージングや歌詞のリズムが消えてしまい、一転して八分音符や十六分音符のパッセージが飛び出してくるジャズに慣れている耳には、かえってこれが新鮮なのだろう。(大江田 信)


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