Side Effect サイド・エフェクト / Portraits

Hi-Fi-Record2009-10-16

The Cool School 74 袋についての考察


結婚式のスピーチなどで
年配の方から「人生には3つの大事な袋があって……」と
ご高説をたまわることがある。


ええと、
あれは何だったっけ。


給料袋、
堪忍袋、
そして
お袋!


ちなみに
レコード好きがたどる道は
給料袋が
レコード袋に化けて
お袋の堪忍袋の緒が切れる、なんつって。


レコード袋、
ここではすなわち
レコード屋さんの屋号を入れたお買い上げ袋のことを指すのだが、
アメリカで初めてレコードを買ったときに
最初にカルチャーショックを受けたのは
その袋についてだった。


端的に言うと、
袋がない。
ないんです。


もしあったとしても
デザインされた店のロゴが入ったなんてのが出てくるのは稀で、
下手したらスーパーのレジ袋を使い回ししたようなものを
「ほい」と渡されておしまい。


レコード・ショウのような
プロのディーラーから素人に毛の生えたような販売者まで
いろんなひとたちが集う場所なら
それもしかたないかと思えるが、
ちゃんとしたお店ですらそうなのだから驚く。


いや、
ひょっとして驚いているのは
世界的な基準で言うと日本人以外のひとたちなのかもしれない。
わざわざそんな袋まで作るなんて
結構な宣伝投資をしてるねと感心こそされても、
それを真似しようとは思わないわけだもの。


車社会のアメリカでは
レコード袋を持ってぶらぶらするという行為自体が
ありえないというのも理由のひとつかもしれない。


それでも都会に行けばレコードを持ち歩いているひとは結構いる。
袋になんか入れないでむき出しにしているひとが多いのも
海外の特徴だ。
買ったレコード=自分というアピールを
颯爽と世間に向けて発信しているようで
あれはなかなか見ていて気持ちがいい。


ただしそういうむき出しの持ち運びは
お気に入りを2、3枚見つくろうショッピングならいいのだろうが、
ぼくたちのような買付となると
そうもいかない。


一度にまとめて買ったレコードを車まで運ぶには
袋や箱が必要だ。


会計を終えると
だいたいこう訊かれる。
「Bag or box?(袋か? 箱か?)」


ところがこの問いに対する答えが最初のうち
なかなか通じなかった。


コツがわかったのはしばらくしてから。
日本人のカタカナ感覚の英語では
「バッグ」と「ボックス」はちょっと似てしまうのだが、
実際に通じやすく発音すると
「ベアグ」と「バクス」で
全然違うものなのだ。


「バクス」と答えられるときは
ぼくたちはニコニコだ。
いっぱい買えたという意味だから。


最後に
アメリカの友人が使っている
シングル盤持ち運びのナイスな袋について。


それはコロナビールのミニボトルを6本収める紙の手提げ箱で
うそかまことか
ビールを抜いて使うと
シングル盤にサイズがぴったりなのだ。
これだって立派なレコード袋だと思う。


たくましいやつら。(この項おわり)


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サイド・エフェクト
抜群のソウル感覚を持っているのに
ジャズ好きな気持ちも捨てきれないというか、
昔のアルバムでも
ランバート・ヘンドリックス&ロスの「クラウドバースト」なんかを
堂々とやっていた。


ソウル・ファンからしたら
そんなことしなきゃいいのに、って感じなのだろうか。


しかし、
その折衷感覚が
こうやって奇跡の名曲を生むこともある。


「イフ・ユー・ビリーヴ」
こんな曲に出会えるしあわせは
彼らが自分の好きなものをあきらめなかったからだモノ。(松永良平


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