Tracey Dey トレイシー・デイ / Gonna Get Along Without You Now /

Hi-Fi-Record2009-10-24

 レコードはシングル盤サイズの長さの音を収録することから始まった。3分強の音の時間を、封じ込めるメディアだった。19世紀も終わりの頃のことだ。


 それか50年余、片面で20分強の時間を収録する30cm大のLPレコードと民生機が一般的に販売されるようになるのが1950年代のことで、その後LPが普及するに従って、LPと7インチ・シングルの棲み分けが起きる。
 LP初期にはクラシックやポップ音楽が、多く収録された。あなたの夫の前でストリップティーズをする時の音楽なんて代物のLPレコードもある。クラシックとポップの次にLPに収録されたのが、フォークとジャズだ。このふたつは、レコードにおける発表の場としてLPを得ることで、その後の音楽におもしろい変容を生じる。
 ロックンロールの多くは、シングル盤として発売された。ヒット曲をまとめたLP盤を発売するレーベルもあるが、シングル盤しかない場合も珍しくない。


 当初は7インチとLPとは、価格もだいぶ違った。アルバムにはジャケットはあるが、シングル盤には、ジャケットの無いものがほどんど。そのぶん安い。シングルは子供のお小遣いで充分に手の届くおもちゃだった。
 7インチはポータブル・プレイヤーで、LPレコードは居間に置かれた家具的なステレオ装置で。50年代から60年代にかけて、これがアメリカの裕福な家庭での光景だった。7インチは子供部屋でも楽しめるメディア、LPは大人のための、あるいは家族そろって楽しむメディア。そうした棲み分けが出来上がっていく。


 そんな時代のお子ちゃま向けシングルをひとつ。
 なんてまあ、可愛いことでしょう。子供部屋で一人、聞きたかった!(大江田信)



試聴はこちらから。