Arthur Fiedler / Boston Pops ボストン・ポップス / Picnic

Hi-Fi-Record2009-10-25

The Cool School 78 おやじのファンキーな相づち


レコード屋に入って
中で流れているのが音楽とは限らない。


東海岸のしょうしゃな街にあるその店のおやじは
いつも決まってラジオを流している。


それもFMのオールディーズ・チャンネルとかじゃなくて、
AM。
しかも硬派な政治ネタ爆発のトーク・レディオ。


この店主が最高なのは
そのDJのしゃべりに対して
まるでファンキーなソウルに反応するように
「オーイエ」とか「ファッ●×〒■△○……」と相づちを入れるところ。


正確には
それは相づちではなくて
ぼやきというか
呪詛みたいなものなのかもしれないが、
しかめっつらが
しかめすぎて笑えるとでもいうような
たくまざるユーモアがこのひとにはあるのだ。


彼はおそらく思想的にはオバマ寄りだと思うのだが
こないだ行ったときは
共和党寄りの右派ラジオを聞いていた。


当然DJはオバマに対する悪口をこれでもかと並べ立てる。


大江田さんと
「あのひとはオバマ支持だと思ってたんですがねえ」と
首をかしげた。


しかし、
その理由にぼくは気がついた。


おやじは
わざと自分の主張と反対のラジオを聞いているのだ。
彼は「YES!」で相づちを入れたいタイプではなく
「BOO!」とNOをしたいタイプにちがいない。


人間は
悪口を言っているときの方が活き活きとしているときがある。


そんな真理を
思いがけずぼくたちは知るのだ。


このおやじには
おもしろい話がほかにもあるので
またいつか書きたい。(何となくつづく)


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昨日、
大江田さんがレコードは音を記録するメディアとして始まったと
書いている。


“音楽”ではない。
一番最初の円筒式のレコーディング・メディアでは
まだ音楽のような細かいニュアンスを記録することが難しかった。


だから
記録される主な音源は
人間の声だったのだ。


RCAビクターのトレードマークとして愛された
ニッパー犬と蓄音機。
犬が聴いているのは
亡くなった主人の声(His Master's Voice)。


このエピソードを
故人が歌手であったように紹介していた番組があったが
それは間違いで、
犬は単純に主人の話し声を聞いたのだ。


古いRCAのロゴを注意深く見ると
プレーヤーに乗っているレコードが
円盤ではなく
鑞管になっているものがある。


それを知って以来、
うちで仕入れたものの中にもないかと
たとえばこのボストン・ポップスの56年プレス盤くらい古いのは
最近注意してラベルも見るようにしているが、
まだ見つけられずにいる。(松永良平