Flip Top Finnegan / The Flying Fingers Of Flip Top Finnegan

Hi-Fi-Record2009-11-10

The Cool School 85 顔


自分の顔に自信があまりない。


なんて、
結婚相談所みたいなことを書きたいわけではなくて、
アメリカ人レコード・ディーラーに
なかなかぼくの顔を覚えてもらえないという話。


何度か通ったお店を訪れて
ぼくが入ると
「ハイ」「ヘロウ」の簡単な挨拶。


そっけなさの中に
「ん? どっかで見たような?」と
ちょっとだけいぶかしげな顔が見える。


しかし、
車を停めて遅れて入ってきた大江田さんが入ると
「オー、久しぶりだなー!」と
すぐに歓喜の声があがるのだ。


そういうケースは
決して少なくない。


ぼくの場合は
「以前にも来たことあるハイファイなんだけど」と
ひとくさり説明が必要なのに、
大江田さんは
「どこの誰だか覚えてないけど
 お前の顔は確かに見覚えがあるよ」と
一発で受け入れてもらえているのだ。


ただ、
覚えてもらっている場合にも
ひとそれぞれのポイントがあるらしい。


たとえば
ある店にぼくがひとりで訪れたときは
「おまえのボスのオールドガイが一緒じゃないのか?」と訊かれた。


その店主と大江田さんは対して歳が違わないはずだが、
何だか貫禄があるように見えるのだろう。


それに近頃は
日本から買付にやってくるディーラーも
ずいぶん若いひとたちが増えたということもあるかもしれない。
きちんとシャツを着込んで
買付をやっているひとも、なかなか珍しいだろうし。


それから
ある種の世界では大江田さんの顔が有名だということもある。


西海岸のある店に入ったときに
「お前の顔、どこかで見たことあるぞ」と
それまで会ったこともない店主に言われ、
ごそごそと奥の方から彼が持ち出してきた本が
「モンドミュージック2」ということもあったそうだ。


あの本の中で
大江田さんはハイファイの紹介とともに
デーンと顔出しをしている。


まあそれよりも、
その本を資料として持っている
アメリカのレコード屋がいるってことの方が
珍しいはずなんだけど。


年が明けると
ぼくのハイファイ歴も
10年目に入る。


そろそろ
少しは覚えてもらえそうな顔になれないかと
買付中の助手席で
ときどき顔をしかめたり
口をひん曲げたりしていることを
大江田さんは知らないだろう。(この項おわり)


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求めているのは
こんな顔?(松永良平


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