V.A. Dixieland Jug Blowers, Memphis Jug Band、etc / Jugs, Washbo

Hi-Fi-Record2009-11-12

 1960年代に活躍したジム・クエスキンのジャグバンドから、この種の音楽に入った僕には、オリジナル音源を聴いては、なんだクエスキンのあの曲のオリジナルはこれだったのかと、いちいち驚いたものだ。
 ここに収録の「Coney Island Washboard」にしても、「Boodle-Am-Shake」にしても、クエスキン版のカバーがある。クエスキン版は、オリジナルをよくコピーしている。もちろん細部の違い、後継の若い世代なりの工夫もあるが、それにしても音楽の芯を良くとらえている。


 ジャグバンドの音楽が、ジャズの正史において語られる事は、まずない。もっと言ってしまえば、コンボとオーケストラを問わずブラスタイプのジャズばかりが語られ、ストリングバンド・タイプのジャズが語られることが少ない。モダンの時代が花形で、ニューオリンズ・ジャズやスイングはどうしてもその影に隠れている。これは日本ばかりでなく、アメリカでも実はそれほど変わらないのだと、たまに訪れるCDショップの店頭を見ながら気づいた。


 1967年の好編集盤。1920年代、30年代あたりにSPに収録されたジャグバンドの音源を集めている。
 50年代の初頭に、その使命をついえたSP盤に収められていた音楽だ。そこからジャグバンドを拾いだしてまとめたコピレーションには、へそまがりな偏愛と情熱が詰め込まれている。
 聞けばわかる。これもジャズ。太くたゆたう寛容なるジャズの水脈の一つをなしている。
 今になってみて、そんなことを強く感じるようになった。(大江田信)


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