The Cowsills カウシルズ / Most Of All / Siamese Cat

Hi-Fi-Record2009-11-18

 ちょっと訳あって、このところ主として50年代から80年代までのポップスのコンピレーションを片っ端から聴いている。いわゆるベスト盤だ。


 一口にコンピと言っても、ジャンルを縦に掘るもの、ジャンルを縦断して年代で串刺しにするもの、フリーソウル、グルーヴィなどの感性用語を軸にして選ばれたもの、レーベルのコンピなど、さまざまにある。CMで用いられたポップスを集めたもの、イタリアものやシャンソンアメリカン・コーラスの歴史なんて代物もある。とにかく端から順番に聴く。部屋中がヒット曲のオンパレードになる。



 ぼくのポップス歴は、1963年頃から。ラジオのスイッチをひねって、夕方の毎日のリクエスト番組をノートを取りながら必死に聴いていた。その頃のヒット曲、そしてその時代にオールディーズとして聴いた曲を今にして再び聴くと、思わず自分が違う耳の持ち主になっていることに気づく。バックのサウンドの作り方に耳が行ったり、切れ切れに聴こえる歌詞に耳が停まったりする。ガキのころは、こんなことは無かった。
 アーチストのプロフィールや音楽の全体は全くわからなくとも、その一曲が思いもかけずに心に残っていることもある。ボビー・ソロやミーナやジリオラ・チンクエッティのカンツォーネ・ヒットを、一緒に口ずさめる自分に驚いた。


 そのうちに気がつくことと言えば、時代が今に近づくにつれて楽天性や多幸感といったものがポップスから影をひそめて行くことだ。どうしてなのだろう、なんだか残念だ。
 やっぱりこういう曲がいいと思って振り返る。甘酸っぱい気持ち、そして夢心地になる。
 そしてポップスって、ある種の楽天性の謂いなのかと、ふと思うのだ。(大江田信)



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