Nilsson ニルソン / Aerial Ballet (black label)

Hi-Fi-Record2009-11-23

ここ数日の冷え込み、今年の冬は寒そうです。
そういえば最近めっきり"地球温暖化"って言葉聞かなくなりました。
あんまりに寒いので自分が熱くなる(恥ずかしくて)ための話をまた少し。


高校生のころに自画像を描いた。木炭と鉛筆で2枚。


描いたことのある人はわかるかもしれないけれど、自分の顔をあんなに客観視できる体験はそうはないと思う。ちょっとした機会に鏡を見るときは、表情に若干の演出が入り込むはず。自意識とは常に過剰なものですし。

「描いとかなイカンやろ?」
美術部の顧問に促され、マジですか、と気恥ずかしい気分で席に着いた。
はじめは構図を考えながら、表情をどうしようか悩んだけれど、一旦描き始めると濃淡と質感を出すのに必死で、あまり考えず筆をはしらせ、途中でいつの間にかなんとも例えがたい陰気な無表情を描いてしまっていることに気づいた。


ここがターニング・ポイント。わかりやすい表情を作って演出するかしないか。
これは誰かに見せるため? それとも自分に見せるため?
無心で描いたこの表情こそ自画像なのだろうけど、ちょっと…、自意識との葛藤なのであります。


小一時間悩んだ末、「少しだけ演出する」という中途半端な創作に打って出た僕の自画像。
スピリチュアルとエンターテイメントを足して2で割って、スラム●ンクのあの人の絵みたいに良い感じにうまくいくと考えた僕が愚かでした。
「……気味悪くて似てるんじゃない?」と顧問の先生。
完成したのは、不快度120%、キモかわいい薄ら笑いの鉛筆デッサン。それと、今にも泣き咽びそうな微妙に表情の歪んだ「うぅっ!」っていう瞬間の木炭デッサン。描いた自分がいうのもなんだけど、自分で見るのもちょっとキツい、そんな2枚。


自画像デッサンは2枚ともに母校に置いたまま。手元にないのに今でも脳裏にこびり付いている。もう捨てられてるとは思うけれど、画用紙の裏に名前書いちゃってたし、美術部の後輩の皆さん、もし見つけたら悪霊退散(生霊ですが)、即刻焼き払うように。もしくは着払いで送って下さい。自分を戒めるときに眺めることにします。


Nilsson ニルソン / Aerial Ballet (black label)


名盤なのだけれど、見過ごされがちなニルソンのセカンド・アルバム。
ニルソンはこの水彩画の自分の顔をどう思っているのだろう。ぼんやりした淡い色調とタッチ、表情。「Wailing Of The Willow」や「Everybody's Talkin'」を聴いていると腑に落ちるように、勝手にわかったような気がして、それとなく孤独な気分に親しみを感じてしまう。


(藤瀬俊)


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