LEMO / FANTAGENIUS

Hi-Fi-Record2009-12-01

The Cool School 94 男はそれを我慢できない


日本の英語教育を実践的なものにしたいなら
何よりも先に覚えておいた方がいい単語がある。


たとえば“pee”。


これはおしっこのこと。


旅先でいきなりやってくるそのときのために
「スイマセン、おしっこしたいんです」くらいは
英語で言えた方がいい。


“pee”と言えば、
アメリカで仲良くなったディーラーと
車で遠出したときのこと。


夕暮れの帰り道、
高速を飛ばしていたら
それまで楽しそうにぼくと話していた彼が
ハンドルを握りながらふと苦しそうな声を出した。


大丈夫? と訊くと
彼はこう答えた。


「今のはファースト・ウェイヴなんだ。
 これは耐えられる。
 でもセカンド・ウェイヴが来たらオシマイだぞ」


何のことなのか
一瞬意味がわからなかったのだが、
すぐに腑に落ちた。


ああ、peeね!


アメリカのフリーウェイの良いところは
乗り降りが自由だから
出口さえあればどこかのファストフードか
ガス・ステーションで用を足すことが出来ること。


出口も数キロ置きでたくさんある。


ところが
その日にぼくたちが乗っていたのは有料道路で
これは出口と出口の間隔が長いのだ。


何とかファースト・ウェイヴを撃退した彼は
しばらく落ち着いた顔をしていたが、
やがて再び苦しげな顔に変わった。


来たか、セカンド・ウェイヴが!


普段は明るい彼が
クウ〜ンと困った子犬みたいな声を出し始めた。
こりゃ相当だぞ!


そのとき
前方に大きな「M」のロゴを掲げた柱が見えた。


あれはここに「マクドナルド」がありますよというサイン。
レストエリアの所在を知らせるのろしみたいなものだ。


まるで砂漠のオアシスを見つけたように
ぼくたちは幸運を祝福しあった。


まあそんなふうにして
peeにまつわる災難は
ときおりぼくたちを襲うのだ。


全米に展開している古本とレコードのチェーン店でのこと。


今度はぼくが
突然のpeeに襲われた。


こりゃたまらんと
一目散にトイレに。


間一髪で間に合って
しあわせな気持ちでドアを開けた。


すると
目の前に雷に打たれたような顔をして
金髪の女の子が立っていた。


東洋人がそんなに珍しいのかな?


その店で会計を終えて
ふたたびそのトイレの前を通ったとき、
ぼくは少女が驚いたわけを知る。


その店には
トイレがふたつあり、
さっきぼくがあわてて入ったのは
女性用だったのだ。


どうも今回のお話は
レコード屋とあんまり関係がなかったようで。(この項おわり)


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今日のNew Arrivalをご覧になった方は
いつもより数が多いなと思われたことでしょう。


本日から
新たに2件、
CDの発売を始めました。


一件は
boidという日本の実験的なレーベルのカタログ。
作家としても多忙な中原昌也さん率いるヘア・スタイリスティックス
湯浅学さんのバンド湯浅湾など
尋常ならざる作品をリリースしているレーベルです。


お店では
最近のem Recordsがリリースしている
実験的なカタログと向かい合う場所に配置してみました。


挑戦者求む、です。


そしてもう一件は
猫ジャケもラブリーなLEMOという日本人ユニット。


頭で考えた音なのに
突き抜けた気持ち良さがあって
とても驚きました。


今年の暮れのハイファイの
人気商品になるのではないかと思っています。


どうぞよろしく。(松永良平


試聴はこちらから。