Ennio Morricorne エンニオ・モリコーネ / Chamber Music

Hi-Fi-Record2009-12-02

 友人の女性から、便りと言うか、それもちょっとした散文のスタイルになっている文章をもらった。
 なんだか、とてもいいなあと思ったので、本人に了解をもらって、ここに転載させてもらう。
 


 仕事の合間に読もうと思って職場に持参していたが、どうも気が散るので結局家でじっくり読むことにした。タイトルは「お尻に火をつけて」。鈴木亜紀さんというピアノ弾き語りの歌手が書いた旅行記。Oさんが「君によく似ていると思うから読んでみて」と貸して下さった。私そんなに尻軽じゃないんだけど。とにかく久しぶりに本と正面きって向き合えるという淡い期待と、絶対私とは似ていないという斜に構えた思いを抱えて読むことにした。


 8月2日、久しぶりの休日に決行とした。前日は仕事終わりに明け方まで飲んでいたので、そのままベッドにバタンと倒れこんでしまっていた。オンボロアパートの日当たりは最高に良く、お昼にもなると顔に日差しが直撃。カーテンを閉めようとしてうっすら眠い目を開けると、窓越しに玄関の掃除をしていたらしき隣人と目がばっちりあってしまった。まずい、窓全開だった。27歳、乙女の貴重な寝姿をさらしながら寝ていたことに今更ながら気づく。日本ってほんと平和だよなぁ。
 さぁて、目も覚めてしまったことだし、のそっと起き上がりシャワー、洗濯、掃除を一気に行う。この勢いが成立するのは狭い部屋ならでは。


 その日は夏の風がそよそよと心地よく、今度は意識して窓を全開にして、おまけに玄関まで少し開けておく。お湯を沸かしてインスタントのコーヒーを入れて、大のお気に入りCDであるEDITUSをかけて(これもOさん貸し)準備万端。あ〜、いい気持ち。一曲目からエンニオ・モリコーネ、この人達が演奏するとこんなにも切なく甘く美しい。


 座椅子をちょうどいい角度にしてじっくりと読み進める。あぁ悔しいけど、感覚的には「似ている」気がする。感動するところとしないところ。好きな人と嫌いな人。どこにいっても音楽を求めるところ(まぁプロだし)。つらつらと自分の感覚だけ書き進めるところ。行き当たりばったりなようで常に客観的なところ。どこか不器用そうなところ。酒好き。


 時々、何か雷が落ちてきたように、旅に出たくなる。旅に出ればいいことがある保証は何もないけれど、とにかく旅に出ろ旅に出ろと体の中の虫が騒ぎ出す。私は色々考えて、虫たちの騒ぎを止めることに努めてしまうけど、鈴木さんは素直なのだろう。うらやましい。




 文中に出て来るEDITUSは、南米コスタリカのバンドで、ヴァイオリンとギターとパーカッションのインストルメンタル・トリオ。彼ら個々の詳細な背景までは判然としないが、おそらくそれぞれに正規の音楽教育を受けているのだろう。クラシックからラテン、ロック、現代音楽までレパートリーとする音楽性の広さと、それを自らの手元で音楽に再構築する力に優れたバンドであることは間違いない。
 アメリカのグラミーにもノミネートされたことがあるというし、来日公演も果たしたことがある。南米を越えた知名度を持っているとして良いと思うが、なにせ簡単には音源が手に入らない。


 また文中のエンニオ・モリコーネの曲とは、ニュー・シネマ・パラダイスのことだ。その通り、あまく切ない演奏。南米の音楽に鋭く反応する神経の持ち主である彼女のことだから、さぞかし気持ちよくEDITUSの演奏を聴いたことだろう。
 

 ハイファイでエンニオ・モリコーネのアルバムを探したら、これが出てきた。
 モリコーネを音楽の大きさと言うか、幅の広さを物語る作品と言えるのかもしれない。
 

 もらった文章は、ここまでが、前半。
 このあとにも面白い話が続くけれども、今日はここまで。続きはまた明日。(大江田信)


Hi-Fi Record Store